核態勢の見直しで海軍戦術核兵器を復活させるアメリカ

アメリカ国防総省「核態勢の見直し」より

 2月2日、アメリカ政府は新しい「核態勢の見直し(NPR:Nuclear Posture Review)」を公表しました。特に目を引くのは2つの新しい核戦力整備計画で、ロシアとの核軍縮により全廃していた海軍の戦術核兵器を復活させる内容になります。これは近年、ロシアがINF条約(中距離核戦力全廃条約)に違反する地上発射型巡航ミサイルを開発配備した疑いが濃厚となった事への対抗という面があると考えられます。このままアメリカとロシアが核軍縮に付いて再協議し問題を解決できなければ、中距離核戦力と海軍戦術核兵器が復活し、核軍縮の流れは逆行することになるでしょう。

LRSO改造・潜水艦用水中発射核巡航ミサイル

 アメリカ海軍は退役保管していたトマホーク巡航ミサイルの核攻撃型を2012年までに廃棄処分していましたが、新たな核攻撃型巡航ミサイルを開発配備する事に決定しました。空軍の戦略爆撃機用に新開発されている空中発射核巡航ミサイル「LRSO」を元に改造した潜水艦用の水中発射核巡航ミサイルを調達する計画です。攻撃原潜に配備され、核攻撃型トマホークの後継となる海軍戦術核兵器として運用されることになります。

低出力核弾頭搭載型トライデント水中発射弾道ミサイル

 本来は戦略核兵器である戦略原潜用のトライデントD5水中発射弾道ミサイル(SLBM)に低出力核弾頭を装着し、戦術目標に用いようという計画です。このような物を新たに配備するの理由は戦術核兵器の即応投射能力を求めたからです。現在、アメリカ軍が戦術的に使える核兵器は航空機に搭載する自由落下核爆弾と空中発射核巡航ミサイルの2種類ですが、どちらも攻撃を決断して出撃してから目標に着弾するまで亜音速で飛翔することになるので、目標位置によっては数時間は掛かってしまいます。これが弾道ミサイルならば数十分以内に届き、搭載する戦略原潜を前進させればさらに時間が短縮できます。ただしこれは本来の戦略核兵器のSLBMと見分けが付き難く、限定核攻撃の積りで全面核戦争を誘発しかねないのではないか、という問題を抱えています。

 また新たな二つの海軍戦術核兵器は、対ロシアだけでなく北朝鮮への対応手段という側面も大きな意味を持ちます。核兵器開発を進める北朝鮮に対して、近隣にある同盟国に戦術核兵器を配備するという選択をせずとも、核抑止力を強化する手段として機能する事が出来ます。