12月3日、内戦の続くイエメンの反政府勢力フーシ派が、内戦に介入したUAE(アラブ首長国連邦)の西部で建設中のバラカ原子力発電所に向けて巡航ミサイルによる攻撃を行ったと発表、発射の様子を動画で公開しました。なおミサイルは飛行途中で故障したのか墜落した模様で、原子力発電所に被害は生じていません。

フーシ派が公開した巡航ミサイル。機体下部にエンジンポッドが見える
フーシ派が公開した巡航ミサイル。機体下部にエンジンポッドが見える

 フーシ派が公開した動画に映っていたミサイルはイラン製の地対地巡航ミサイル「スーマール」でした。スーマールはロシア製空対地巡航ミサイルKh-55をイランがコピーしてロケットブースターを追加し地対地化させたものです。エンジンポッドが機体外部に飛び出している形式はKh-55とその後継のKh-101にしかない特徴で、Kh-55を地対地化したのはイランだけです。イランは過去にウクライナからKh-55を不正輸入した事が発覚しており、これを元に開発したと見られています。Kh-55は戦略爆撃機用の大型巡航ミサイルなので、戦略爆撃機を持たないイランが活用する為に地対地化したのでしょう。そしてイランがスーマール巡航ミサイルの存在を公表したのは2015年とつい最近の話です。その最新鋭のミサイルが何故かイエメンにある、つまりイランはイエメン内戦を戦うフーシ派に最新鋭兵器を供給していたことがほぼ確実となりました。

 イランはフーシ派へのミサイル供給を否定し続けてきましたが、これでフーシ派が自力生産したと言い張っていた弾道ミサイル「ブルカーンH-2」なども全てイラン製だった疑いが濃厚となりました。ブルカーンH-2に付いてはサウジアラビアやUAEだけでなくアメリカや国連までもイラン製の疑いが濃厚と指摘しており、物的証拠としてフーシ派が過去に発射した弾道ミサイルの残骸からイラン製弾道ミサイル「ギヤーム1」の部品と同じものが発見されたと報告されています。

 イエメンの反政府勢力フーシ派にイランが大型兵器を大量に供給していた、それが原子力発電所への攻撃に使われたとなると、国際社会からの激しい反発を招くことは確実です。フーシ派は最近になって同盟関係を結んでいたサレハ元大統領派に裏切られ、支配していた首都サナアで激しい戦闘となり主要部から撤退を強いられています。劣勢となったフーシ派がイランと一蓮托生とばかり大胆な行動に打って出たのが、今回のバラカ原子力発電所への巡航ミサイル攻撃なのかもしれません。