北朝鮮が弾道ミサイルを日本列島越えで発射、Jアラート配信の妥当性は

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 防衛省によると8月29日午前5時58分ごろ、北朝鮮が平壌市郊外の順安から弾道ミサイルを発射。午前6時5分頃から7分頃にかけて北海道の渡島半島と襟裳岬の上空を通過し、午前6時12分頃、襟裳岬の東約1180kmの太平洋に落下しました。飛翔距離は約2700km、最大到達高度は約550kmで飛行時間は14分間。通常軌道で発射された中距離弾道弾と見られ、火星12号あるいはムスダンである可能性が高いと推定されています。(※8月30日追記:北朝鮮が火星12号発射訓練と声明を発表)

 そして日本政府は北朝鮮のミサイル発射を知らせるJアラート(全国瞬時警報システム)を午前6時2分に流しました。今回の配信の対象地域は東北や北海道を含む12道県です。Jアラートはミサイルが日本に向かって発射された際に警報が鳴らされるもので、結果的に日本領土や領海に着弾しない場合でも実施されます。これは弾道ミサイルが発射直後の加速中の段階では正確な着弾地点が推定できず、しかし正確な計測が出来るまで待っていると警報が間に合わなくなる恐れがあるからです。

・午前5時58分、ミサイル発射。

・午前6時02分、Jアラートで警報。

・午前6時05分、北海道の渡島半島を通過。

・午前6時07分、北海道の襟裳岬を通過。

・午前6時12分、襟裳岬の東1180km沖合に着水。

 今回は通常軌道で発射されたため、日本を狙ったノドン準中距離弾道ミサイルなのか、もっと遠くを飛べる中距離弾道ミサイル以上の射程なのかは判別は難しい状況です。しかし日本海に着弾する可能性は早い時点で消えていました。もしノドンだった場合は火星12号など中距離弾道ミサイルよりは若干速度が遅く、渡島半島への着弾予想時刻は午前6時7分~午前6時8分前後になっていたでしょう。5分の猶予を与えるためには、午前6時2分のJアラート配信はぎりぎりの決断だったと言えます。

 前回の7月28日深夜に北朝鮮がICBMである火星14号を発射し、北海道積丹半島の西約200kmの日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾させた際は、長射程弾道ミサイルの極端な山なりのロフテッド軌道だったので45分間も飛行しており、正確な着弾位置を計算してから警報を出しても間に合う猶予があったのでJアラートは配信されていません。この時の火星14号は日本に届くような加速を継続しておらず手前に落ちたので、着弾するか飛び越えるかという判断よりは容易に区別が付くものでした。(日本に届くだけの加速を継続して初めてJアラートを鳴らす)

 今回は結果的に日本領土への着弾は有りませんでしたが、もし着弾するような危機が発生した場合でもJアラートの配信は時間的に間に合うことが証明できました。弾道ミサイル空襲警報としては、これ以上の速い配信は困難でしょう。発射自体は直後に早期警戒衛星が捉えている筈ですが、この時点では脅威度の低い対象も含めて警報を出すことになるので、現実的ではないからです。