北朝鮮の弾道ミサイル各種解説

北朝鮮の固体燃料ICBM(重野戦機動トラック型)(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の弾道ミサイルは新しく開発されたものが増え、名称もアメリカの付けたコードネームや北朝鮮での本来の名称が混在し、分かり難くなっています。そこで北朝鮮の主要な弾道ミサイルに付いて分類をしてみました。

スカッド・・・スカッドとはロシアがソ連時代に開発した液体燃料一段式の短距離弾道ミサイル(SRBM))であるR-11とその改良型R-17の系統に命名されたNATOコードネーム。北朝鮮での名称は「火星5号」「火星6号」で、射程は300~600kmと短距離のため韓国への攻撃用に用いられる。移動発射機(TEL)は8輪式重野戦機動トラック。

スカッドER・・・スカッドの燃料タンクを延長した射程延伸型。射程1000kmに達し準中距離弾道ミサイル(MRBM)に分類される。韓国だけでなく日本の一部まで届く性能を持ちつつ、スカッド用の発射機で運用できる。北朝鮮側から正確な名称は発表されていない。

スカッド精密誘導型・・・スカッドに操舵翼を装着し精密誘導を可能にしたもの。大きさは従来型スカッドとほぼ同じで、射程は300~600kmの短距離弾道ミサイルと推定される。移動発射機は戦車を改造した履帯式。北朝鮮の発表では海上目標と陸上目標の両方を狙えるとしているが、実質的には対地目標への精密誘導のみを目的にしている可能性が高い。北朝鮮側から名称は公表されておらず、アメリカの報道でアメリカ軍の名付けたコードネームで「KN-17」に分類されたと報道があったものの、後日に試験発射された火星12号をKN-17とする報道が見られ、アメリカ国内のメディアで混乱があるので注意。なお現時点でアメリカの軍当局は公式発表でKN-17が何かとは一度も言及しておらず、混乱は正されていない。(※2017年8月28日追記:スカッド精密誘導型のコードネームはKN-18であると訂正された事が判明。)

トーチカ・・・ロシア製の固体燃料一段式の短距離弾道ミサイル「トーチカ」の北朝鮮版で、北朝鮮での名称は「火星11号」。射程はスカッドよりも短く160km程度。アメリカ軍の公式発表資料では「KN-02」と分類されている。

ノドン・・・スカッドを大型化した液体燃料一段式の準中距離弾道ミサイル。命名は発見された北朝鮮の地名からアメリカが付けたもので、北朝鮮での名称は「火星7号」。射程は推定1300kmで日本全土を射程に収める。搭載する移動発射機は10輪式重野戦機動トラックで、スカッド用のものより大きな車両を用いる。

ムスダン・・・ムスダンもノドンと同じように発見された地名からアメリカ側が名付けた名称であり、北朝鮮での名称は「火星10号」。旧ソ連の潜水艦発射弾道ミサイルR-27を原型とした液体燃料一段式の中距離弾道ミサイル(IRBM)で、射程は3000~4000kmと推定され、グアムのアメリカ軍基地への攻撃用とされる。ただしこれまで確認された試験発射で発揮された能力ではグアムまで若干届かない。移動発射機は12輪式重野戦機動トラックを用いる。

火星12号・・・ムスダンのロケットエンジンを変更し燃料タンクを延長した改良型と推定され、液体燃料一段式をそのままに射程はより長くなり、グアムを確実に射程に収めることを目標にした中距離弾道ミサイル。移動発射機はムスダン用と同じ12輪式重野戦機動トラックを用いている。なおアメリカが発見するより早く北朝鮮が存在を公表したため、ムスダンのような地名からのコードネームは付けられていない。またアメリカで番号のコードネーム「KN-17」が与えられたとする報道が一部にあるが、スカッド精密誘導型の方にKN-17の番号が割り振られたとする報道もあり、混乱が生じている。現時点でアメリカ軍の公式発表にKN-17に関するものは無いため報道メディアが勘違いしている可能性が高く、現状ではKN-17という分類を用いることは推奨されない。(※2017年8月28日追記:スカッド精密誘導型のコードネームはKN-18であると訂正され、火星12号がKN-17であることが確定。)

火星14号・・・火星12号を液体燃料二段式に改良した大陸間弾道ミサイル(ICBM)。アメリカ側のコードネームはKN-20。発射実験で発揮された能力からは最大射程6700kmと推定されアラスカまで届く性能を持つ。移動発射機は16輪式重野戦機動トラックを用いている。火星14号の登場以前にこの16輪式移動発射機は複数種類の大型ミサイルを搭載してパレードで姿を見せており、このうちの一つが火星13号(アメリカ側のコードネームKN-08)という名称である事が判明している。火星13号は一度も試験をしないまま、大きく改良された火星14号で試験発射を実施した事になる。

北極星1号・・・固体燃料二段式の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)。アメリカ側のコードネームはKN-11。潜水艦からの水中発射に成功しているがミサイルのサイズが小さいために射程が短く、このままではアメリカへの脅威にはならない。より大型の潜水艦を建造しミサイルもより大型化していくと重大な脅威に発展する恐れがある。北極星1号のサイズと構成から、中国の潜水艦発射弾道ミサイル「巨浪1」ないし旧ソ連の「RT-15M」が似通っており、どちらかを参考にしているという推測があるものの詳細は全く判明してない。

北極星2号・・・北極星1号を地上発射型にしたものだが、そのままではなく直径のサイズなどが大型化している。アメリカ側のコードネームはKN-15。搭載する移動発射機は戦車を改造した履帯式で、キャニスター(ミサイル収納容器)からガスによりコールドランチで発射され、空中でロケットモーターに点火する方式。これまで実施された試験発射から射程は1200km以上と推定され、日本攻撃用に用いられる可能性が高い。日本攻撃用のミサイルが液体燃料式のノドンから固体燃料式の北極星に更新されていった場合、発射準備が数分で済む固体燃料式の北極星は発射前に撃破することが非常に困難なものとなり、脅威が大きく増すことになる。

固体燃料ICBM(重野戦機動トラック型)・・・平壌での軍事パレードに登場。16輪式重野戦機動トラックにキャニスターを搭載して現れ、試験発射も行われていないため、内部のミサイルがどのようなものかは全く不明。キャニスターを使う以上はコールドランチ固体燃料式である可能性が高く、固体燃料でICBM級の射程を狙うのであれば三段式と推定される。北朝鮮から正式名称は発表されていない。

固体燃料ICBM(トレーラー牽引型)・・・平壌での軍事パレードに重野戦機動トラック型と共に登場。キャニスターの長さが重野戦機動トラック型のものよりも短く、内部に入るミサイルはコールドランチ固体燃料三段式という形式は同じでもサイズが小さいと推定される。なぜ形式が同じでサイズが異なるICBMを同時に開発しているのかは不明。こちらもまだ試験発射は行われておらず、正式名称も発表されていない。