自衛隊機が妨害弾(囮用の赤外線フレア)を使ったと中国が抗議
12月10日、中国軍の戦略爆撃機を含む大型機の編隊が東シナ海から宮古海峡を通過してフィリピン海に進出していきました。これは11月25日の際と同じ編隊が逆のルートで戻って来たものです。中国国内の基地間の移動展開訓練を、わざと台湾の周囲を大きく回り宮古海峡を通過して行っています。なお領空侵犯などは発生していません。
そして12月10日に中国軍機の編隊に対して航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進して遭遇した際に、「日本の戦闘機が妨害弾を発射して中国機の邪魔をした」と中国国防部が声明を発表、日本の行為を非難しました。妨害弾とは中国語で「干渉弾」と表記されるもので、フレア(赤外線を発する熱源の囮弾)の事になります。敵機が赤外線誘導の空対空ミサイルを発射した際に自機が囮として放出する熱源体で、防御的に使用する兵器です。
- 日本防衛省・平成28年度防衛白書より
妨害弾=フレアであることは、日本防衛省でも使われている言葉です。中国語で干渉弾=フレアであることも、軍事用語として間違いありません。
基本的にフレアは相手が攻撃的な動作をしない限りは使用されません。相手の攻撃動作を察知して確証がないまま予防的に使用することはありえますが、何もしていない相手に挑発目的でフレアをばら撒くのは考え難い行動です。中国軍機が先に何らかの挑発行動を取り、日本自衛隊機が対応行動としてフレアを使ったと考えるのが自然でしょう。日本防衛省はフレアを使ったのか使わなかったのかの質問には明言を避けているので、おそらく航空自衛隊の戦闘機はフレアを使ったものと思われます。
しかし中国側は日本戦闘機が挑発的にフレアを使用した証拠を出せておらず、日本側は中国戦闘機が異常接近やロックオンなどの挑発行動を行った証拠を出せていないため、このままではどちらの言い分が正しいのかは水掛け論に終わってしまうでしょう。中国は抗議を行うなら映像や電波情報などで証拠を確保してからにすべきですし、日本側も中国側の抗議に備えて自身の潔白を示す証拠を示せるように、今後同じような事態が起きた際に備えておく必要があります。