悔しさをバネに這い上がった古賀紗理那、島村春世、けがから復活の長岡望悠 女子バレー代表が得た強さと柱

逞しくなった古賀、副キャプテン指名は中田監督の期待の表れ(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

コロナ禍の国際親善試合、無事にと願いながら

 東京オリンピックのテストも兼ねた「バレーボール日本代表国際親善試合~東京チャレンジ2021~」が5月1日、2日にオリンピックの会場である有明アリーナで行われました。女子は、5月1日に世界1位の中国と戦いました。

 オリンピックイヤーと言いながら、新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらず、緊急事態宣言が出されている状況の中で行われた親善試合。今回私は、先輩・オリンピアンとして、キャスターとして、そして日本バレーボール協会の広報として、という3つの目線で見ました。

 まずは、オリンピックまでたどり着くためのテストイベントなので、無事に行われてほしいというのが一番にありました。その一方で、学校やお店、私は演劇をやっていますが、舞台が中止になったり、それぞれが自分の生活や仕事の部分でいろいろと我慢している状況の中で、この国際親善試合がある、正直、複雑な気持ちもありました。オリンピックのためにいろんなことを我慢していることで、オリンピックが悪者のようになっていることが心苦しいですが、やはり、選手、監督、スタッフの思いを聞くと、国民を含めた世の中が応援してくれる中で、オリンピックを開催できる流れになることを祈りながら、日本女子代表について書いてみます。

黒後、石川も中心的存在に成長
黒後、石川も中心的存在に成長写真:YUTAKA/アフロスポーツ

1年延期で古賀、黒後、石川が独り立ち

 オリンピックは4年に1度。今回の東京は延期になったことでリオから5年あきましたが、巡り合わせ、タイミングで出る出られないというのはオリンピックにはつきものです。その時に調子が良かったり、旬の選手、オリンピックを前にして引退した選手もいれば、1年延びたからたどり着いた選手もいる。男女代表ともそれらが割とはっきりしていると思います。女子では、新鍋(理沙)という久美さん(中田監督)のバレーの、大事な柱が引退したのは残念だったけれども、古賀(紗理那)、黒後(愛)、石川(真佑)の3人が独り立ちできたように、キャリアを積めたことがとても大きなことだと思います。

 今回の中国との親善試合には、今年代表初選出の籾井(あき)や、同じく国際大会デビューの林(琴奈)が入りました。オリンピック代表の12人を決めるまでの時間は、この中国戦とFIVBバレーボールネーションズリーグしかなく、久美さんも、メンバーをどうするか、悩んだり葛藤しながら行っていくのでしょう。やはり本当の実力は世界と戦ってみないとわからないこともあるので、いろんな思惑があったと思われます。

リオ落選、W杯での不甲斐なさで変わった古賀

 そういった中で、特筆したいのは、やはり紗理那(古賀)です。私は、東京オリンピックへ向けての道は2019年のワールドカップ(W杯)から直結しているような気がしているのですが、若い石川がデビューしたそのW杯で、選手たちはいろんな思いを持ち戦いました。その中で一番悔しい思いをしていたのが古賀だったと思います。

 そもそもリオのときに代表落選という悔しい思いをして、さらに、東京オリンピックを前にしたW杯での不甲斐なさというのが、彼女を変えました。あの悔しい思いがあったから、「Vリーグで絶対頑張って、結果を出すんだ」という思いがストレートに結果につながり、 2020‐2021シーズン、一番よかったのは古賀だろうと誰もが声を揃えるくらいに成長しました。オリンピックが1年延びたことで、技術的なものだけでなく、メンタル的な部分もより強くなったと思います。キャリアを重ね、考え方を含めて大人に骨太になった。この1年がチームの柱になるきっかけになったんじゃないかなと。大きな収穫です。

 オポジット、レフト含めてのアウトサイドのポジション争い、「誰が真のエースなのか」。W杯でもずっと言われていたのが、「誰がチームを引っ張るのか」ということ。それでも、W杯は日替わり的な感じでした。最終的には場数、キャリアも力になっている石井(優希)が踏ん張るところもありましたが、さあ今年は、その「誰が引っ張るのか」という争いに、古賀の存在は大きな光となるでしょう。今年、代表の副キャプテンに指名したのは、久美さんの期待の表れだと思います。

島村は、「悔しい」と涙を流したことも
島村は、「悔しい」と涙を流したことも写真:YUTAKA/アフロスポーツ

一度代表から外れた悔しさで奮起した島村

 島村(春世)も、2020年に一度代表を外れてから再び戻ってきました。スパイク賞を初受賞するなど、彼女の2020‐2021V リーグも素晴らしかった。2018年の世界選手権では出場機会がなく、2019年のW杯ではメンバーから外れました。

 私はコートサイド解説や、リポートをしていたので、練習後、試合前後、会見の合間などに、カメラや誰もいない所で選手と話をする機会が多いのですが、時には先輩として見守っていたり、時にはキャスターとして、一言でも彼女たちの空気や、思いを知り、それらを伝えたいというのが私の立場での役割だと思っています。ここはぶれずに25年やってきていますが、ふとした時に、彼女たちの本音が出ることがあります。プレーから人生相談まで(笑)いろいろな立場で接していて、なかなか書けない話、内緒話もあるのですが(笑)近くにいて、毎日選手を見て、頑張る姿や戦う姿を取材していると、より選手がいとおしくなり、本当に頑張ってほしい! というふうに思います。

 W杯の時、終盤戦の横浜ラウンドで島村と話していたら、「悔しいです」と言って涙を流しました。試合に出られず悔しい思いや様々な葛藤がありながら、大会を終えました。そして4月の日本代表始動記者会見で、帰ってきた島村に「頑張ったね」と言うと、「本当にあの悔しさで頑張れました。わかってくれて嬉しいです」と、再び、頑張ってきた涙……。こちらまでもらい泣きしそうになってしまいました。

 追い込まれた所からの逆襲!? 踏ん張りは古賀も島村もそうですが、人として彼女たちを成長させました。改めて嬉しく思います。

 彼女の背負っていたものも大きくて、悔しさをバネにしてここまで這い上がってきた人の力というのは、日本代表の中で大きなどっしりしたものになっていると感じました。中国戦、出番がなかったのは残念でしたが、島村がドリンクを作ったりタオルを渡したり、そういうふうに尽くしている姿を見て、胸がいっぱいになりました。彼女はその覚悟できているので、ネーションズリーグで出場のチャンスがあったら、彼女のテーマであるブロックで見せてほしいと思います。

長岡はさすがの安定感。中田監督も笑顔に
長岡はさすがの安定感。中田監督も笑顔に写真:ロイター/アフロ

2度の左膝前十字靭帯の大けがから復活した長岡

 また、長岡(望悠)とも話しましたが、「なんとかここに来るまでは、間に合いました」という言葉が全てで、会見などでも、「ここまで戻ってくるまでに支えてもらった、助けられた」と話していますが、この台詞を言うのは2回目。自分がまだ結果を出し切れていないのにという思いもあると思いますが、オリンピックが1年延期になったことで、2度のけがから、彼女が戻って来られたというのは、最終的なメンバーはどうなるかわからないですが、チャンスを神様から与えられた子なんだな、と。頑張ってきたものがチャンスをつかむところまでたどり着いた、ご褒美なんじゃないかなと思いました。

 ジャンプ力、体力、試合勘はこれからかもしれないですが、いる安定感はある。男子の清水(邦広)が復活してからは、勢いでガンガンいくというよりも、上手さを身に着けていったように、望悠も今できる、プレースタイルを変えて戻ってきた。それは頼もしく、嬉しいことです。

 彼女たちだけでなく、選手それぞれみんなにドラマがあって、1年半前のW杯よりもみんなが大きくなって帰ってきたなと。いろんな経験を積んで、それが確実にプラスになっていると感じました。

 中国にはストレートで敗れましたが、試合後に、久美さんは、「こういう時期に世界ランキング1位の中国と戦って、(日本代表の)立ち位置や通用すること、しないことが明確になりました。選手たちのモチベーションに対しても大きな意味のある時間だったと思います」と、話していました。ここからの時間、けがなく体調管理に気をつけて、本番に向けてさらに技術を磨いてほしいと思います。

金メダルを取り、有明アリーナで「君が代」を

 この国際親善試合では、試合前に国歌斉唱があり、そのとき久美さんを見ていて涙が出ました。ポールに日の丸を掲げ、「君が代」を斉唱する。それは久美さん自身が一番求めてきたことです。

 東京オリンピックで、日の丸が上がる瞬間を見たい。キャスターとして、体操や他の競技で日の丸が上がるのを見てきましたし、「君が代」を聴いてきたけれど、バレーボールではまだ聴いていません。だからこそ、日本代表が金メダルを取って、ぜひまたこの有明アリーナで「君が代」を流してほしいです。

チーム一丸となって東京五輪でメダル獲得へ
チーム一丸となって東京五輪でメダル獲得へ写真:YUTAKA/アフロスポーツ