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台風一過とはならず・下層暖湿気流入で雨の降りやすい日が続く

饒村曜気象予報士
日本海の台風11号の雲と日本の南海上の熱帯低気圧などの雲(9月6日15時)

台風11号が温帯低気圧に

 令和4年(2022年)8月28日(日)午後3時に南鳥島近海で発生した台風11号は、日本の南を西へ進みながら発達し、猛烈な台風(最大風速が54メートル以上の台風)になりました。

 その後、次第に南よりに進路を変え、沖縄の南でほとんど停滞しました(図1)。

図1 令和4年(2022年)の台風11号の経路
図1 令和4年(2022年)の台風11号の経路

 その後、台風11号はゆっくり北上をしはじめ、9月3日の夜遅く、沖縄県宮古列島を通過し、東シナ海に入っています。

 宮古列島の多良間島にある多良間空港では、23時10分に風速が3.4メートルとなり、それまで吹いていた15メートル以上の東よりの風が弱まり、その後25メートル以上の西よりの強い風が吹いています。

 このことから、台風11号は、多良間島の真上を通過したと思われます。

 東シナ海を北上した台風11号は、5日夜遅くから6日未明に対馬海峡を通って日本海に入り、6日(火)21時に日本海で温帯低気圧に変わりました。

 台風の発達期は、最大風速が次第に強くなり、強風域の半径も次第に大きくなります。

 最盛期を過ぎると、最大風速は弱まるものの、強風域の大きさはあまり変化せず、逆に大きくなる台風もあります。

 台風11号は、強風域の範囲が広がらず、最大風速だけがどんどん増加し、猛烈な台風にまで発達しました。

 その後、最大風速が小さくなりましたが、強風域の範囲が広がり、大型の台風になりました(図2)。

図2 台風の大きさと強さの変化(左は台風11号の場合、右はモデル台風の場合)
図2 台風の大きさと強さの変化(左は台風11号の場合、右はモデル台風の場合)

 このような台風11号の強さと大きさの変化は、モデル的な台風と少し違っていますが、珍しくはありません。

 台風11号のように、台風が東シナ海から日本海北部へ進む場合は、一般的には太平洋高気圧が強まっているときです。

このため、台風が過ぎ去ると、太平洋高気圧に覆われ、晴れて暑くなります。

 しかし、今年は様相が違います。

日本の南海上は低圧部

 令和4年(2022年)の8月末までの台風発生数11個は、平年の8月末までの発生数13.6個より少ないのですが、接近数と上陸数は平年並みになっています(表)。

表 令和4年(2022年)と平年の台風発生数・接近数・上陸数
表 令和4年(2022年)と平年の台風発生数・接近数・上陸数

 なお、接近数は、月をまたぐ場合はダブって計算されますので、月別の数の一年の合計は、年間の接近数より多くなります。

 台風の発生数は少ないものの、影響する台風の数は多くなりそうというのが、今の所、令和4年(2022年)の台風の特徴です。

 現在、台風11号を日本海北部に押し上げた太平洋高気圧は、南北方向の幅がほとんどありません。

 日本の南海上は広い範囲で低圧部になっています。

 この低圧部の中で熱帯低気圧(熱低)や低気圧が次々に発生しては消滅しています(図3、タイトル画像)。

図3 地上天気図(9月6日9時)と予想天気図(9月7日9時の予想、8日9時の予想)
図3 地上天気図(9月6日9時)と予想天気図(9月7日9時の予想、8日9時の予想)

 この低圧部の中から、台風12号が発生する可能性が十分あります。

 しかも、日本に近いところでの発生となりますので、発生まもなく日本に接近する可能性が高いという危険性があります。

 9月は台風シーズン真っ盛りです。

 台風上陸数が一番多いのも、台風被害が一番多いのも9月ですので、警戒が必要な9月です。

曇りや雨の一週間

 日本の南海上に広い低圧部があることで、日本付近は、南から暖かくて湿った空気が入りやすくなっています。

 このため、東日本の太平洋側では、台風11号が通過した後の晴天(台風一過の晴天)とはならず、曇りや雨が多い天気が続く見込みです(図4)。

図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 大気が不安定となり、局地的に積乱雲が発達して猛烈な雨が降る可能性もあります。

 また、西日本を中心に最高気温が30度以上の真夏日が続き、北日本でも最高気温が25度以上の夏日が続く見込みですが、湿度が高い中での真夏日、夏日です。

 9月に入りましたが、熱中症になりやすい状態が続く予報ですので、引き続き熱中症対策が必要です。

ただ、この週間天気予報は、日本の南海上で台風12号が発生した場合は、大きく変わる可能性がある予報です。

 最新の気象情報に注意する一週間になりそうです。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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