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寒気を伴った低気圧が次々に通過し大気不安定 積乱雲の発達による局地的な雨と蒸し暑さに警戒

饒村曜気象予報士
発達した積乱雲のカナトコ雲(撮影提供:長谷部愛)

寒気を伴った低気圧が次々に通過

 太平洋高気圧の北への張り出しは弱いため、日本付近は上層に寒気を伴った低気圧が次々に通過しています(図1)。

図1 地上天気図(左は7月12日9時、右は7月13日9時)
図1 地上天気図(左は7月12日9時、右は7月13日9時)

 低気圧に向って下層に暖かくて湿った空気が流入し、大気が不安定な状態が続いていますので、積乱雲が発達し、局地的な雷雨となっています。

 7月12日夜には埼玉県で記録的短時間大雨情報が7月12日に9回、10地点に出されています(表)。

表 埼玉県の記録的短時間大雨情報
表 埼玉県の記録的短時間大雨情報

 このうち、20時10分の鳩山で110ミリと、22時の狭山市入間川で108ミリというのがアメダスの実際の観測雨量です。

 17時50分の鳩山町付近で約100ミリなど、残りの8地点は、レーダー観測などをもとにした解析雨量と呼ばれる推定値です。

 鳩山では6時間雨量が360ミリと、平年の7月のおよそ2倍に相当する記録的な大雨により、埼玉県では浸水キキクルで、「黒(災害切迫)」が発表になりました(図2)。

図2 埼玉県の浸水キキクル(7月12日21時)
図2 埼玉県の浸水キキクル(7月12日21時)

 キキクルは、気象庁が土砂災害や洪水など大雨による身の回りの危険が一目でわかるように発表している「危険度分布」の愛称で、土砂キキクル、浸水キキクル、洪水キキクルの3種類があります。

 このキキクルが、令和4年(2022年)6月30日から改善され、砂・浸水・洪水すべてのキキクルに警戒レベル5相当(災害切迫)「黒」が新しく加わりましたが、今回が最初の適用でした。

 7月13日の日中は、東北南部でも、仙台で176ミリなどの大雨が降り、宮城県の大江川や田尻川で氾濫が発生しました(図3)。

図3 7月13日18時までの24時間降水量
図3 7月13日18時までの24時間降水量

 土の中の水分量が多い地方もありますので、今後の雨によっては、土砂災害の危険性が高まります。

 激しく降るおそれもあり、土砂災害や低い土地の浸水などに注意をして下さい。

 また、太平洋高気圧が弱いといっても晴れ間が多く、強い日射で気温が上昇して蒸し暑くなっていますので、こまめな水分補給を心掛けて下さい。

 大雨と暑さに警戒する天気は、しばらく続く見込みです。

日本海の低気圧

 7月14日は、低気圧が発達しながら朝鮮半島北部を通って日本海を進みます(図4)。

図4 予想天気図(左は7月14日9時の予想、右は7月15日9時の予想)
図4 予想天気図(左は7月14日9時の予想、右は7月15日9時の予想)

 このため、西日本では雨、東日本も午後から雨の見込みで、雷を伴って激しく降る見込みです。

 コンピュータの計算では、50ミリ以上の雨を計算していますが、この値は、ある程度の領域の平均雨量で、局地的な雷雨が降る場合は、この値より大きくなります(図5)。

図5 36時間予想降水量(15日6時までの36時間)
図5 36時間予想降水量(15日6時までの36時間)

 北日本も太平洋側を中心に雲の多い天気となって、所々で雨が降りそうです。

 南西諸島はにわか雨の所がある見込みです。

 最高気温は、北海道は平年より高い所が多くなりますが、その他の地域は平年並みか低い予想となります。

 しかし、平年並みと言っても、7月中旬の気温で、しかも湿度が高い平年並みです。

 熱中症になりやすい、蒸し暑い温度ですので、こまめな水分補給を心掛けて下さい。

 発達した積乱雲による局地的な雨や落雷・突風などと、蒸し暑さによる熱中症に対する警戒は、しばらく続きます。

図1、図2、図4の出典:気象庁ホームページ。

図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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