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東京よりも気温が高い北海道、北海道では意外と国内一の高温が観測される

饒村曜気象予報士
タイトル画像 晴天の北海道(5月9日15時)

東京よりも高い札幌の気温

 令和4年5月10日の最高気温の予報を見ると、札幌や帯広の最高気温は26度(最高気温25度以上の夏日)となっており、東京の20度など、多くの都市の予報より高い値です(図1)。

図1 各地の天気予報(5月9日夕方に気象庁が発表した5月10日の予報、数字は左が最高気温で右が最低気温)
図1 各地の天気予報(5月9日夕方に気象庁が発表した5月10日の予報、数字は左が最高気温で右が最低気温)

 このように、4月から5月は、北日本が気温の全国ランキングで上位にくることは珍しくはありません。

春の北日本の高温

 月別に日本の高温のランキングを作ると、11月から3月の上位10地点(タイ記録を含む)は、ほとんどが沖縄県です(表1)。

表1 最高気温の高い方から10位タイまでの都道府県(南鳥島を除く)
表1 最高気温の高い方から10位タイまでの都道府県(南鳥島を除く)

 沖縄県以外では鹿児島県が入ってきますが、奄美大島の名瀬ですので、11月から3月は南西諸島で上位独占です。

 これに対し、4月~5月は北日本(北海道と岩手県)でも上位10位に入ってきます。

 特に5月は、令和元年(2019年)5月29日に北海道門別地方・佐呂間で最高気温39.5度を観測するなど、真夏日どころか、最高気温35度以上の猛暑日を観測したために上位独占でした(表2)。

表2 最高気温のランキング(左は4月、右は5月)
表2 最高気温のランキング(左は4月、右は5月)

 大陸からの高温で乾燥した空気の流入や強い日射、フェーン現象が重なっても記録です。

 北海道以外では、19位タイに埼玉県・秩父の37.2度がはいるのが5月のランキングです。

 北日本の春は、意外と日本一の高温が観測されるのです。

そして、6月以降は埼玉県など内陸の県がランクインしてきますが、8月から10月は新潟や富山という北陸が目立ちます。

 これは、台風が日本海に入ったときにおきるフェーン現象によるものです。

初めての真夏日レースを制した岩手県

 その年初めての真夏日は沖縄県で観測されることが多く、次いで、宮崎・大分・静岡の各県で観測されています。

 21世紀に入って昨年までで21年になりますが、1位となった県はのべ34県です。

 内訳は、6回が沖縄県、4回が宮崎県・大分県・静岡県、3回が熊本県・山梨県、2回が高知県・広島県・東京都、1回が鹿児島県・兵庫県・三重県・長野県でした。

 しかし、今年初の真夏日は、4月11日に釜石など岩手県の6地点でした。

 太平洋高気圧を回り込むように南からの温かい空気が北上し、岩手県では強い日射に加え、フェーン現象が起きたために4月としては記録的な高温になり、初めて真夏日レースを制しました(図2)。

図2 地上天気図(4月11日15時)
図2 地上天気図(4月11日15時)

 なお、岩手県は、平成10年(1998年)4月21日にも真夏日を観測していますが、この時は、8日前の4月13日に石川県・金沢、富山県・高岡、新潟県・上越で真夏日を観測したため、全国初とはなりませんでした。

 北日本では、ときおり、春に記録的に高い気温を観測しています。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、表2の出典:気象庁ホームページ。

表1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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