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台風16号がマリアナ諸島近海で発生か 進路不確実ながら日本に大きな影響を与える台風が多い海域

饒村曜気象予報士
グアム島の東海上の熱帯低気圧の雲(9月23日3時00分)

熱帯低気圧のマリアナ近海へ接近

 熱帯低気圧が発生し、グアム島などがあるマリアナ近海に接近中です。

 熱帯低気圧の中心付近では雲が渦を巻き始めていますので、台風16号に発達するかもしれません(タイトル画像参照)。

 熱帯低気圧は、西北西進して、明日朝には、マリアナ近海(関東のはるか南海上)に達する見込みです(図1)。

図1 地上天気図(上段、9月22日21時)と予想天気図(下段、9月24日9時)
図1 地上天気図(上段、9月22日21時)と予想天気図(下段、9月24日9時)

 もし、この熱帯低気圧が台風にまで発達すると、9月23日15時に南シナ海で台風15号が発生しましたので、台風16号ということになります。

 令和3年(2021年)の台風発生数は、これまで平年より若干少なく推移していますが、これでほぼ平年並みの台風発生に近づきます(表)。

表 平年と令和3年(2021年)9月11日までの台風発生数・接近数・上陸数
表 平年と令和3年(2021年)9月11日までの台風発生数・接近数・上陸数

 また、台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300キロ以内に入った場合を「台風の接近」といいますが、これまで9個接近しており、ほぼ平年並みの接近数です。

 台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「台風の上陸」といいますが、これまで、台風8号が宮城県石巻市付近に、台風9号が鹿児島県枕崎市付近に、台風14号が福岡県福津市付近に上陸しています。

 つまり、台風の上陸数は、すでに平年並みの3個に達しています。

9月の台風の経路

 昔、台風の進路について調べたことがあります。

 9月にマリアナ近海の台風は、西進を続けてバシー海峡へ進むもの、西進のち北上して沖縄近海から西日本へ進むもの、北西進のち北東進で東日本に接近するもの、北上を続けて日本の東海上を通過するものなど、統計的には様々です(図2)。

図2 9月の台風の平均経路
図2 9月の台風の平均経路

 日本をはじめ、各国のスーパーコンピュータの計算では、この熱帯低気圧が発達して北上することを示していますが、予報にばらつきがあり、現時点では不確実です。

 ただ、いくつかの可能性の中には、過去に大災害をもたらした台風と似た経路も含まれています。

 例えば、昭和29年(1954年)洞爺丸台風と、昭和34年(1959年)伊勢湾台風は、いずれもマリアナ近海を通って9月26日頃に襲来しています(図3)。

図3 昭和29年(1954年)洞爺丸台風の経路と昭和34年(1959年)伊勢湾台風の経路
図3 昭和29年(1954年)洞爺丸台風の経路と昭和34年(1959年)伊勢湾台風の経路

 洞爺丸台風では、青函連絡船の「洞爺丸」が沈没するなどで死者・行方不明者が1100人以上に達し、伊勢湾台風では伊勢湾の高潮などで死者・行方不明者が5000人を超えています。

 このため、9月26日が台風襲来の特異日(厄日)と言われたことがあります。

 マリアナ諸島に接近中の熱帯低気圧は、進路等が不確実といっても、油断できません。

 最新の情報に注意が必要です。

【追記と一部記述の修正(9月23日17時30分)】

 気象庁は9月23日16時30分に、南シナ海で台風15号が発生し、マリアナ諸島の熱帯低気圧も、今後24時間以内に台風になると発表しました。

 そして、非常に強い台風に発達しながら日本の南海上に達するとの予報を発表しました(図4)。

 このため、本文を一部修正し、図4を追加しました。

図4 マリアナ諸島の熱帯低気圧の進路予報(9月23日15時)
図4 マリアナ諸島の熱帯低気圧の進路予報(9月23日15時)

 

タイトル画像、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図3、表の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計―月別発生数・存在分布・平均経路―、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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