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日本列島の秋雨前線と日本の東海上で発生した熱帯低気圧

饒村曜気象予報士
ほぼ東西に伸びる秋雨前線の雲と円形の熱帯低気圧の雲(右下)(9月1日15時)

秋雨前線

 厳しい暑さの8月末から一転、9月に入ると日本付近に前線が停滞しています(図1)。

図1 地上天気図(9月1日21時)
図1 地上天気図(9月1日21時)

 大陸育ちの秋の高気圧が日本列島に張り出してきたことによる停滞前線ですので、東日本を中心とした秋の長雨をもたらす、典型的な秋雨前線です。

 秋雨前線の南側に位置する西日本の太平洋側では夏の暑さが残りますが、秋雨前線付近やその北側に位置する東日本から山陰地方にかけては気温が低くなり、特に北東の冷たい空気が流れ込みやすくなる関東地方は気温が低くなっています。

 9月1日の東京の最高気温は23.5度と、前日、8月31日の最高気温より8.9度も低く、10月上旬の気温となっています。

 秋雨前線が停滞する関東から九州北部にかけては、48時間で、所により100ミリ以上のまとまった雨が降る見込みですし、その後もしばらく雨が続く見込みです(図2)。

図2 48時間予想降水量(9月2日~3日)
図2 48時間予想降水量(9月2日~3日)

 まとまった雨量でなくても、雨の日が続くときには、日照不足などで収穫間近の農作物の成育不良や病害虫の発生を招きやすく、このようなときに大雨が降ると、崖崩れなどの災害が頻発するので、注意が必要です。

秋雨前線と台風

 秋雨前線が日本付近に停滞している時に台風が南海上から北上してくる場合は、梅雨前線のときと同様に、台風のまわりの湿った暖かい空気が前線の活動を活発にし、特に大雨となることがあります。

 昔から「9月は台風シーズン」と言われているのは、台風が秋雨前線を刺激して大雨を降らせることによって大きな人的被害や、収穫直前の稲をダメにする大災害が発生してきたからです。

 秋雨前線と台風は危険な組み合わせなのです。

 秋雨前線によって東日本から西日本の日本海側で雨が降っている9月1日21時に、日本の東海上で熱帯低気圧が発生しました。

 この熱帯低気圧は、8月30日に日付変更線を越えて西進してきた雲の渦巻に対応するものです(図3)。

図3 予想天気図(9月2日9時の予想)と雲の渦の位置(図中の黒丸が9時の位置)
図3 予想天気図(9月2日9時の予想)と雲の渦の位置(図中の黒丸が9時の位置)

 この熱帯低気圧が台風にまで発達するかどうかははっきりしていませんが、もし台風に発達した場合は、台風13号です。

 筆者が昔行った台風統計によれば、この時期、この海域の台風は、そのまま北上して日本にはあまり接近しないものが多いと言うことができます(図4)。

図4 台風の平均進路(8月)
図4 台風の平均進路(8月)

 このため、秋雨前線と台風という危険な組み合わせにはならない可能性が高いのですが、ただ、一部の台風は少し西進してから北上して関東に接近しますので、油断はできません。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

図4の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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