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台風9号の九州・沖縄接近前に、3つの熱帯低気圧(1つは台風10号に発達)に警戒が必要

饒村曜気象予報士
日本の南の雲の塊(8月4日21時)

台風9号の接近

 令和3年(2021年)8月4日9時に南シナ海で台風9号が発生しました。

 台風が発生した南シナ海北部や進行方向にあたる台湾海峡・東シナ海南部の海面水温は台風発達の目安となる27度を上回っています(図1)。

図1 台風9号の進路予報(8月4日21時)
図1 台風9号の進路予報(8月4日21時)

 中国の華南に上陸し、沿岸部を北東進するという予報ですが、台湾海峡などからの暖かくて湿った空気の補給をうけ、あまり衰えない状態で東シナ海南部に達し、西日本に接近する見込みです。

 週末は沖縄地方に、週明けは九州に接近する予報ですので、台風9号に注意が必要です。

 ただ、この台風9号の接近前に、日本付近にある3つの熱帯低気圧に注意が必要です。

沖縄近海の熱帯低気圧は台風10号へ

 日本列島は太平洋高気圧の一部が張り出し、日本海側を中心に厳しい暑さとなっていますが、南西諸島から小笠原諸島の東海上にかけて3つの熱帯低気圧があります(図2)。

図2 地上天気図(8月5日21時)
図2 地上天気図(8月5日21時)

 そして、この3つの熱帯低気圧に対応して、積乱雲の塊があります(タイトル画像参照)。

 台風9号が東シナ海に入ってくる前に、この3つの熱帯低気圧が日本に影響をあたえそうです。

 まず、沖縄付近の熱帯低気圧です。

 この熱帯低気圧は、中心の南側にしか積乱雲の塊がありませんが、徐々に発達しており、今後24時間以内に台風10号に発達する見込みです(図3)。

図3 発達する熱帯低気圧に関する予報(8月4日21時)
図3 発達する熱帯低気圧に関する予報(8月4日21時)

 沖縄近海での台風発生ですので、発生と同時に沖縄地方は台風に対する警戒が必要となります。

 そして、8月6日(金)には九州南部に接近し、8月8日(日)には東京2020オリンピックの閉会式が予定されている東京に接近する可能性があります。

 最悪、西日本は、台風10号襲来に続いて、台風9号も襲来ということも考えられます。

 進路予報が非常に難しく、大きな予報円ですので、最新の台風情報の入手に努め、警戒してください。

【追記(8月5日18時30分)】

 沖縄近海の熱帯低気圧は、発達して8月5日15時に台風10号になりました。

小笠原近海と小笠原東海上の熱帯低気圧

 小笠原近海と小笠原東海上にも熱帯低気圧があります。

 これらの熱帯低気圧は、台風にまで発達するという予報にはなっていませんが、発達した積乱雲の塊を伴っています。

 このため、これらの熱帯低気圧が接近すると激しい雨が降る可能性があります。

 現時点では、小笠原近海の熱帯低気圧は西進して紀伊半島沖に進む見込みです(図4)。

図4 予想天気図(8月6日9時の予想)
図4 予想天気図(8月6日9時の予想)

 また、小笠原東海上の熱帯低気圧は、関東の東海上から三陸沖を北上する見込みです。

 熱帯低気圧を動かす上空の風の流れが弱く、はっきりしていないため、これらの熱帯低気圧の進路予報は非常に難しいのですが、日本列島のすぐ近くを通る見込みです。

 ちょっと進路がずれれば、陸地にかかってきます。

【追記(8月5日18時30分)】

 小笠原東海上の熱帯低気圧は、発達して8月5日15時に台風11号になりました。

 沖縄近海で発生した台風10号と同時発生です。

 発生したばかりの台風9号が九州・沖縄に接近してきますが、その前に、日本付近の3つの熱帯低気圧に警戒、特に雨に警戒が必要です。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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