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台風3号発生の可能性があった 5月に南シナ海にある台風の中には沖縄県先島諸島に接近したものもある

饒村曜気象予報士
フィリピンのミンダナオ島の東海上にある熱帯低気圧の雲(5月13日13時)

台風3号の発生か

 令和3年(2021年)5月13日は、フィリピンのミンダナオ島東海上にある熱帯低気圧が発達し、台風3号になる見込みでした(図1、タイトル画像参照)。

図1 熱帯低気圧情報(5月13日21時発表)
図1 熱帯低気圧情報(5月13日21時発表)

 熱帯低気圧が存在する海域は、海面水温が29度以上と、台風が発達する目安となっている27度を大きく上回っていたからです。

 ただ、台風が発生しても西北西進して、すぐにミンダナオ島に上陸する見込みで、5月15日にはスル海で熱帯低気圧に衰える予報となっていました。

 しかし、台風に発達する前にミンダナオ島に上陸して衰弱しましたので、気象庁は5月14日3時に、台風になるかもしれないという熱帯低気圧に関する情報を取り消しました。

 筆者が過去に調べた5月の台風は、グアム島の南東海上で発生するものと、フィリピンの東海上で発生する台風に大別できます(図2)。

図2 台風の5月の平均経路図
図2 台風の5月の平均経路図

 このうち、フィリピンの東海上で発生する台風は、

(1)ルソン島の東海上を北上するもの

(2)フィリピンを通過して南シナ海に入り、そのまま北西進を続けるもの

(3)フィリピンを通過して南シナ海に入ってから向きを北に変え、北上して沖縄県先島諸島に接近するものがあります。

 日本に影響する可能性は小さいのですが、5月に南シナ海にある台風の中には、北上して沖縄県先島諸島に接近したものもあります。

台風の統計

 台風の定義が「中心付近の最大風速が17.2m/s以上の熱帯低気圧」と決まった昭和26年(1951年)から台風についての各種統計があります。

 ただ、気象庁の平年値は、西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新しています。

 そして、今年、令和3年5月19日から、現平年値「2010平年値(1981~2010年の観測値による平年値)」から、新平年値「2020平年値(1991~2020年の観測値による平年値)」に切り替えます。

 台風に関する各種平年値も同じ扱いです。

 台風の年間発生数は、25.6個から25.1個へと、若干減るものの、上陸数は2.7個から3.0個へと若干増えています(表)。

表 令和3年(2021年)の4月までの台風発生数と、発生数・接近数・上陸数の新旧平年値
表 令和3年(2021年)の4月までの台風発生数と、発生数・接近数・上陸数の新旧平年値

 また、接近数も11.4個から11.7個へと若干増えています。

 つまり、台風の発生数は減っても、日本に影響する台風の数は増えるということから、より一層の防災対策が必要となっています。

【追記(5月14日6時)】本記事は、台風発生の可能性がなくなったため、一部内容を差し替えました。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供

図2の出典:「饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁」に筆者加筆。

表の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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