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真冬なみの寒気と冷えていない日本海との温度差で大雪 次の強烈寒波は18日夜から 安全に除雪作業を

饒村曜気象予報士
日本海の雪雲(12月17日15時)

今季最強寒気が南下

 日本列島は、西高東低の気圧配置となり、今季最強の寒気が南下しています(図1)。

図1 地上天気図(12月17日15時)
図1 地上天気図(12月17日15時)

 日本列島に南下する寒気の目安として、上空約5500mの気温が使われます。

 上空約5500mの気温が氷点下30度以下なら強い寒気、氷点下36度以下なら非常に強い寒気で大雪の可能性もあります。

 12月14日の週明けから南下してきた寒気は、北海道北部では、氷点下36度どころか、氷点下42度以下という、真冬でもなかなか出現しない強烈な寒気でした(図2)。

図2 上空約5500mの気温分布(左は12月16日朝の実況、右は18日朝の予報)
図2 上空約5500mの気温分布(左は12月16日朝の実況、右は18日朝の予報)

 現在は、氷点下42度以下という強烈な寒気は日本列島から過ぎ去っていますが、北日本はまだまだ氷点下30度以下の強い寒気に覆われています。

 この影響で、日本海側を中心に大雪となり、群馬県みなかみ町藤原では12月15日16時から17日16時までの48時間に199cmも降るなど、日本海側を中心に記録的な大雪となっています。

 集中豪雪の影響で、関越道の新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で約千台の車が立ち往生したことから、新潟県は自衛隊に災害派遣を要請しています。

 関越自動車道で発生している立ち往生の解消や、車内にいるドライバーの安全確保のためです。

筋状雲の発生場所

 冬季、シベリアからの強い寒気が南下すると、比較的暖かい日本海を渡るときに下層から温められ、水蒸気の補給をうけて下層から変質します。

 そして大気が不安定となって積乱雲が発生し、その雲が列をなして並びます。

 雲の列はいくつもできますので、筋状雲(すじじょううん)と呼ばれます(図3)。

図3 北西季節風と筋状雲の発生
図3 北西季節風と筋状雲の発生

 筋状雲は、脊梁山脈にあたって上昇し、日本海側の地方に大雪を降らせます。そして太平洋側に乾燥した空気(からっ風)として吹きおります。

 気象衛星画像での筋状雲の注目点は、日本海にできる筋状雲が、アジア大陸の沖合のどこから発生しているかです。

 アジア大陸に近いところから筋状雲が発生している場合(日本海に入るとすぐに対流雲が発生している場合)は、強い寒気が日本に向かっていると考えられますので大雪になる可能性があります。

 これは、シベリアからの寒気と日本海の温度の差が大きいほど、多くの熱と水蒸気の補給をうけ、すぐに積乱雲が発生するからです。

 逆に、アジア大陸から離れてから筋状雲が発生している場合は、寒気の南下が弱いときです。

 昨日、12月16日の日本海の筋状雲は、アジア大陸に近いところから発生していました(図4)。

図4 昨日の日本海の雪雲(12月16日15時)
図4 昨日の日本海の雪雲(12月16日15時)

 現在、12月17日の日本海の筋状雲は、大陸から少し離れたところから発生しています(タイトル画像参照)。

 この時点における寒気の南下は一段落したと考えられますが、引き続き、多量の筋状雲が発生しますし、18日夜からは、再び氷点下42度以下という、真冬でもなかなか出現しない強烈な寒気が北海道に南下してきます。

 寒気南下の強弱はありますが、しばらくは西高東低の冬型の気圧配置の日が続きますので、日本海側の地方では大雪に警戒する日々が続きます。

初冬の日本海はまだ暖かい

 初冬の日本海は、冬に向かって海面水温が低下しているといっても、真冬に比べれば、まだ暖かさが残っています(図5)。

図5 日本海の海面水温(12月16日)
図5 日本海の海面水温(12月16日)

 しかも、日本海中部で平年に比べて3度も高いなど、日本海全体が平年より高い海面水温です。

 つまり、大気と海との温度差は、真冬よりはるかに大きい状態です。

 「例年の真冬に強い寒気が南下」したとき以上に、警戒が必要な「令和2年(2020年)12月の真冬並みの寒気の南下」です。

 多量の水蒸気の補給をうけ、下層から大きく変質し、日本海側の地方に大雪を降らせ易い状態は、日本海が冷えてくるまでしばらく続きます。

 次の強烈な寒気は18日夜から南下してきます。

 大雪が降った地方では、小康状態のときに、こまめに雪下ろしや除雪作業をしておかないと、残った雪の上に新雪が積もってますます雪下ろしや除雪作業が困難となります。

 ただ、雪下ろしでは毎年のように死亡事故が発生しています。

小康状態の18日の日中は、必ず命綱をつけて雪下ろしをしてください

タイトル画像、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図5の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜(平成26年(2014年))、天気と気象100(一生付き合う自然現象を本格解説)、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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