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小春日和というより小夏日和の暑さからの初冬の寒さ

饒村曜気象予報士
暑さと寒さの交替(11月20日12時の地上天気図と気象衛星から見た雲)

日本海低気圧に向かって強い暖気が北上

 日本海北部から北海道にかけて前線が停滞し、この前線に向かって暖かい空気が流入しているため、西日本を中心に晴れて暖かい週明けとなりました。

 その後、前線上に低気圧が発生し、発達しながら北海道を通過しましたので、週半ばは西日本や北陸を中心に、11月としては記録的な暑さとなりました。

 気象庁は全国の920地点で気温の観測をしていますが、11月19日に冬日(最低気温が氷点下となった日)を観測したのが7地点(全体の約1%)に対し、夏日(最高気温が25度以上の日)を観測したのが253地点(約28%)と圧倒的に多くなっています(図1)。

図1 夏日と冬日の観測地点数(11月13日~20日)
図1 夏日と冬日の観測地点数(11月13日~20日)

 11月20日は、前日ほどではありませんが、西日本や北陸を中心に、記録的な暑さが続いています。

 県庁所在地での最高気温は、那覇28.0度、金沢26.6度、徳島25.7度、長野25.5度、高知25.3度、奈良と富山25.0度となり、いずれも夏日となっています。

 そして、11月20日は、徳島、長野、奈良、富山における観測史上最も遅い夏日となりました。

 晩秋から初冬に、高気圧におおわれて風が弱く、日射があると気温が上昇して過ごしやすい春のような天気となることがあります。

 これを「小春日和」といい、厳しい冬に向かって寒くなっているときに、ほっとした暖かさとなるのですが、令和2年(2020年)は暖かすぎます。

 「小夏日和」と呼んだ方が適切な暖かさです。 

「小春日和」と「小夏日和」

 気象現象としての「小春日和」は、日本だけでなく外国にもあります。

 ただ、国民性の違いなのか、晩秋から初冬の寒さの中の暖かさは、アメリカでは「インディアン・サマー」、イギリスでは「セント・マーチンの夏」、フランスでは「サンマルタンの夏」、ドイツでは「老婦人の夏」、ロシアでは「女の夏」と夏に例えています。

 欧米人にとっての過ごしやすい季節は、夏であるのかもしれませんが、日本の夏は気温が高いことに加えて、湿度が高いため、日本人は、過ごしやすい季節は春と考えている人が多いために違いがでていると思われます。

 ただ、沖縄には、昔から「10月夏小(ジュウグヮチナチグヮー)」という言葉があります。

 これは、旧暦10月の立冬の頃(11月7日頃)の前後数日間、北東の季節風がやみ、時には穏やかな快晴となって最高気温が30度前後にまで上がるときの言葉です。

 夏小を逆にすれば小夏です。

 近年、沖縄の新聞やテレビで「小夏日和」が使われていますが、地球温暖化が進めば、沖縄以外の地方でも、使われるかもしれません。

寒冷前線の通過

 11月の記録的な暖かさも、20日までです。

 これは、北海道を通過した低気圧から延びる寒冷前線が通過し、以後は寒気が南下してくるからです(タイトル画像参照)。

 各地の11月21日の最高気温の予報は、寒冷前線の通過によって前日20日より5度以上低くなり、特に長野では15度、金沢で13度も低くなっています(図2)。

図2 各地の11月21日の最高気温の予報と前日差
図2 各地の11月21日の最高気温の予報と前日差

 ただ、低くなったといっても、これで平年並みの気温です。

11月末から初冬の気温

 三連休中日の11月22日は、再度、寒冷前線が南下してきます(図3)。

図3 予想天気図(11月22日9時の予想)
図3 予想天気図(11月22日9時の予想)

 そして、この寒冷前線が通過後、西高東低の冬型の気圧配置が継続して寒気が南下し寒くなりますが、これで平年並みです。

 東京の最高気温の推移をみると、10月末以降の最高気温は平年より高い日が多く、11月下旬に気温が低くなって平年並みです。

 最高気温が平年より低くなるのは来週の末、11月末から12月の初めです(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温(11月21日から27日は気象庁、11月28日から12月6日ウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温(11月21日から27日は気象庁、11月28日から12月6日ウェザーマップの予報)

 最低気温は、10月末以降、平年値を挟んで高かったり低かったりしていましたが、今週半ばには、平年の最高気温よりも高くなったあと、大きく下がっていますが、それでも平年より高い予想です。

 そして、最低気温が平年より低くなるのも来週の末、11月末から12月の初めです

 強い寒気の目安として、「上空約5500メートルの気温が氷点下30度以下」というのがあります。

 「小夏日和」と思える暖かさの直前の今週初めには、北海道北部まで氷点下30度以下の寒気が南下していました。

 その氷点下30以下の寒気が、再び北海道まで南下してきます(図5)。

図5 日本上空約5500メートルの気温(11月23日朝)
図5 日本上空約5500メートルの気温(11月23日朝)

 そして、少し暖かくなったあと、来週末、つまり、11月末から12月の初めには、氷点下30度以下の寒気が東北地方まで南下し、この寒気はしばらく継続し、初冬の寒さが始まる予報です。

 短期間で気温が大きく下がりますので、体調を崩さないように注意して下さい。

 健康で医療機関の負担を掛けないことは、新型コロナの患者急増による医療崩壊を起こさないための対策です。

「山装う」から「山眠る」へ

 日本海側では雨や雪、太平洋側では晴れるという冬に多い天気となりますが、気温は、徐々に下がってきます。

 俳句の世界では、秋の山は、紅葉で美しく彩られた山ということで「山装う」ですが、冬の山は、活動を停止した山ということで「山眠る」です。

山の四季の表現

春 山笑う

夏 山滴る

秋 山装う(山粧う)

冬 山眠る 

 季節は、「小春日和(小夏日和)」を挟みながら次第に寒くなり、「山装う」から「山眠る」へ移行します。

タイトル画像、図2、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:気象庁とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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