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今冬一番の寒さと放射冷却

饒村曜気象予報士
タイトル画像 減ってきた日本海の寒気の吹き出しに伴う雲(11月11日15時)

今冬一番の寒気の南下

 強い寒気の目安として、「上空約5500メートルの気温が氷点下36度」というものがあります。

 この氷点下36度という強い寒気が、週明けに南下してきました。

 このため、北日本の平野部まで雪が降りましたが、晩秋は、強い寒気が南下しても長続きしません。

 週半ばには、この氷点下36度という寒気は、千島付近へ去っています(図1)。

図1 上空約5500メートルの気温(左は11月9日夜、右は11日朝)
図1 上空約5500メートルの気温(左は11月9日夜、右は11日朝)

 日本列島は西高東低の冬型の気圧配置から、移動性高気圧に覆われてきました(図2)。

図2 予想天気図(11月12日9時の予想図)
図2 予想天気図(11月12日9時の予想図)

最低気温の予想

 寒気が南下してきた週明けの11月9日から、今季最低気温を観測する地点や、最低気温が0度未満という冬日が増えています(図3)。

 11月11日には、全国で気温を観測している919地点のうち、301地点(33パーセント)が今季最低気温を観測し、238地点(26パーセント)が冬日を観測しました(図3)。

図3 令和2年(2020年)11月の今季最低気温観測地点数と冬日観測地点数
図3 令和2年(2020年)11月の今季最低気温観測地点数と冬日観測地点数

 11月12日の朝は、強い寒気が去ったあととはいえ、11日よりもさらに気温が低くなる予想です(図4)。

図4 予想最低気温(11月12日)
図4 予想最低気温(11月12日)

 これは、放射冷却がおきると予想されているからです。

放射冷却

 曇っている場合の夜間は、気温は急激には下がりませんが、よく晴れていて、空気中の水蒸気が少ない場合は、地表面からの放射によって、地表面の気温が大きく下がることもあります。このような状態で気温が下がることを放射冷却と呼びます(図5)。

図5 放射冷却のしくみ
図5 放射冷却のしくみ

 水は比熱容量が大きいため、水蒸気が多いと放射冷却が起こりにくく、風が強い場合には、たとえ放射冷却が起こっても上空の暖かい空気との混合が起きて放射冷却が弱くなります。

 移動性高気圧に覆われた早朝は、放射冷却が起きやすい条件がそろいますので、朝の最低気温が低くなりますが、11月12日の朝もそうです。

 太陽が昇ると、日射によって地表面が温められますので、放射冷却による厳しい冷え込みは早朝だけの現象です。

 日中の最高気温は平年並みまであがりますので、一日の寒暖差が大きくなります。

 外出時の洋服選びには、時間ごとに発表されている細かい気象情報をご利用ください。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ資料より著者作成。

図5の出典:饒村曜(2014年)、天気と気象100、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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