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週末の伊豆諸島と関東・東海地方は熱帯低気圧の雨に注意

饒村曜気象予報士
小笠原近海の熱帯低気圧の雲(9月10日15時30分)

小笠原近海の熱帯低気圧

 令和2年(2020年)9月10日9時に、小笠原近海で熱帯低気圧が発生しました(図1)。

図1 地上天気図(9月10日9時)
図1 地上天気図(9月10日9時)

 この海域では、2日ほど前から帯状に雲が増え始め、9月10日には、雲が渦を巻き始めたからです(図2)。

図2 小笠原近海を北上する雲の塊(左から9月8日13時、9日13時、10日13時)
図2 小笠原近海を北上する雲の塊(左から9月8日13時、9日13時、10日13時)

 熱帯低気圧は、発生したばかりであり、今後の動き等ははっきりしていませんが、今の所、ゆっくり北西進です。

24時間以内に台風となる熱帯低気圧

 気象庁は、これまで、24時間以内に台風に発達する熱帯低気圧については、24時間先までの進路予報を発表していました。

 しかし、9月9日15時以降に発生した熱帯低気圧からは、5日先までの進路予報を発表することとしています。

 つまり、4日ほど前の9月6日、特別警報を発表する可能性のあった台風10号が、勢力をあまり落とさずに北上し、九州・沖縄地方は、暴風と大雨などで大きな被害が発生しています。

 このとき、台風10号が発生する前の8月31日21時の熱帯低気圧の進路予報は24時間先まででした(図3)。

図3 令和2年8月31日21時の進路予報(矢印は5日先までの予報が行われた場合の想定)
図3 令和2年8月31日21時の進路予報(矢印は5日先までの予報が行われた場合の想定)

 24時間以内に台風に発達するということはわかっても、日本に影響するかどうかはわからないという予報でした。

 この時に、5日先までの予報が発表されていたら、多分、図3に書き込んだ矢印のように、5日後の9月5日夜には、九州の南海上に達することが示されていたと思われます。

熱帯低気圧が台風に発達したら

 小笠原近海の熱帯低気圧は、今の所、24時間以内に台風に発達しないと考えられていますので、5日先までの進路予報は発表されていません。

 もし、24時間以内に台風に発達すると予想された場合、熱帯低気圧であっても、5日先までの進路予報が発表されます。

 そして、台風になれば、台風11号の発生です。

 著者が昔調べた統計調査によれば、この季節、この海域の台風は、西進のち北上して関東・東海地方に接近します(図4)。

図4 台風の進行速度を加味した平均経路(9月)
図4 台風の進行速度を加味した平均経路(9月)

 この図では、平均的に12時間で進む距離毎に区切りを入れてあります。

 小笠原近海で台風が発生した場合は数日で東海・関東地方へ接近となります。

 その意味でも、台風になりそうな熱帯低気圧に対して、5日先までの進路予報が発表されることは、防災上に大きな意味があると思います。

台風にならなくても

 小笠原近海の熱帯低気圧は、台風にならなくても、周囲に発達した積乱雲を伴っています。

 そして、この雨雲は、熱帯低気圧の北上に伴い、9月11日にかけて小笠原近海を西進し、12日には東海から関東沖へ北上してくると予想されています(図5)。

図5 予想天気図(9月12日9時の予想) 
図5 予想天気図(9月12日9時の予想) 

 このため、週末の伊豆諸島や関東・東海地方では、熱帯低気圧による雨や風が強まる可能性があります。

 最新の気象情報に注意が必要です。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図5の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料に著者加筆。

図4の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)―進行速度―、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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