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二年連続で台風一過の猛暑

饒村曜気象予報士
晴天域が多い衛星画像(9月8日15時)

台風10号一過後

 特別警報を発表する可能性のあった台風10号は、中心気圧が920ヘクトパスカルまでさがり、あまり勢力を落とさずに奄美大島から九州の南海上を北上し、九州・沖縄地方は、暴風と大雨などで大きな被害が発生しました。

 その台風10号は北上を続け、朝鮮半島に上陸、その後、中国東北区で温帯低気圧に変わりましたが、前線があまり南下してきません(図1)。

図1 地上天気図(9月8日15時)
図1 地上天気図(9月8日15時)

 日本列島には、低気圧をまわる気流によって、南の海上から暖かくて湿った空気が運ばれています。

 また、太平洋高気圧の縁辺をまわる気流によって、南の海上から暖かくて湿った空気が運ばれています。

 このため、日本列島は大気が不安定となり、2つの気流がぶつかっている東海地方を中心に所により雨となっている所もありますが、全国的に気温が高く、湿度も高くて熱中症になりやすい状態となっています。

 9月8日は、フェーン現象がおきた北陸地方は猛暑日(最高気温が35度以上の日)となり、関東・東海や西日本だけでなく、北日本でも真夏日(最高気温が30度以上の日)の所が多くなっています(図2)。

図2 気温分布推計(9月8日13時)
図2 気温分布推計(9月8日13時)

 9月8日は、気温を観測している912地点のうち猛暑日は83地点(全体の9パーセント)、真夏日は704地点(77パーセント)、夏日(最高気温が25度以上の日)は903地点(99パーセント)でした(図3)。

図3 令和2年(2020年)8月1日以降の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数
図3 令和2年(2020年)8月1日以降の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数

 9月に入り、8月中旬の殺人的な猛暑の期間よりは、気温が下がるところが多かったのですが、台風10号の通過後は、再び気温が高くなったところが多くなっています。

令和元年(2019年)9月9日

 一年前の令和元年(2019年)9月9日5時前に、台風15号が千葉市付近に記録的な強さで上陸しました。

 上陸時の台風の中心気圧は960ヘクトパスカルと、関東上陸台風での中心気圧が低いほうの1位タイです。

 台風15号により、8日0時から9日5時までの最大瞬間風速(最大風速)は、千葉市中央区で57.5メートル(35.9メートル)、東京都神津島空港で58.1メートル(43.4メートル)、羽田空港で43.2メートル(32.4メートル)、横浜市中区で41.8メートル(23.4メートル)という、記録的な暴風を観測しました。

 台風15号は時速25キロメートルくらいで関東地方を縦断し、太平洋に抜けましたが、通過した9月9日の午後以降は、晴れて強い日射が加わり、全国的に気温が上昇し、猛暑となっています。

 地上天気図を見ると、間宮海峡付近に朝鮮半島に上陸した台風13号から変わった低気圧がありますが、この台風13号が日本列島に南から暖気を持ち込んでいました(図4)。

図4 地上天気図(令和元年(2019年)9月9日3時)
図4 地上天気図(令和元年(2019年)9月9日3時)

 これに、台風15号によって南からさらに暖気が加わったのです。

 多くの秋台風は、少し衰えながら北上し、秋雨前線を刺激して広い範囲で大雨を降らせ、通過後は北から寒気を引き下ろし、台風一過で爽やかな晴天となります。

 しかし、令和元年(2019年)の台風15号、令和2年(2020年)の台風10号と二年連続で違う台風が出現しています。

 この2つの台風は、ともに9月に接近・上陸した台風ですが、多くの夏台風のように衰えることなく北上し、南から暖気を北上させています。

 近年は、9月まで夏模様ですので、台風が接近したら、台風警戒に引き続き、猛暑による熱中症に警戒が必要となってきました。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図4の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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