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南海上には台風7号の卵、太平洋高気圧の強化で40度突破

饒村曜気象予報士
小笠原諸島近海を西進している台風7号になりそうな熱帯低気圧(8月11日12時)

台風5号に続いて台風7号が

 令和2年(2020年)は、台風の発生ペースが遅く、台風1号が発生したのは5月12日21時と、台風の統計が整備されている昭和26年(1951年)以降の70年間で8番目の遅さでした。

 その後、6月12日21時に台風2号が発生したものの、台風3号の発生は、8月1日15時のトンキン湾でした。

 このため、昭和26年の統計開始以来、初の「7月の台風発生数0」となりました。

 また、7月末までの台風発生数が2個で、平成10年(1998年)の1個に次ぐ2位の少ない記録となりました。

 その後、台風4号が8月1日の21時に沖縄の南海上で発生し、沖縄県先島諸島を通って中国の華中に上陸しました。

 台風5号が9日3時に沖縄の南海上で、台風6号が10日12時に発生し、7月とはうってかわって台風ラッシュの8月となっています。

 台風5号は沖縄本島近海を通って朝鮮半島南部に上陸、8月11日9時に日本海で温帯低気圧に変わりましたが、台風6号が中国の華南に上陸して北上中です。

【追記(8月11日22時)】

 台風6号は、8月11日21時に中国の華中で熱帯低気圧に変わりました。

 更に、小笠原近海には台風7号になりそうな熱帯低気圧(熱低)があって、西進しており、台風7号に発達しそうです(図1)。

図1 台風6号の台風進路予報と台風7号に発達しそうな熱低の進路予報(8月11日12時)
図1 台風6号の台風進路予報と台風7号に発達しそうな熱低の進路予報(8月11日12時)

 小笠原近海の海面水温は、台風が発達する目安とされる27度を大きく上回っていますし、背の高い積乱雲が少ないものの、渦がしっかりしています(タイトル画像参照)。

過去の8月の台風

 過去の台風資料から、8月の平均経路を求めると、小笠原近海を西進する台風は、九州の南海上に進んだ後、北上して九州の西海上か紀伊半島に接近します(図2)。

図2 8月の平均的な台風経路図
図2 8月の平均的な台風経路図

 また、沖縄近海に輪を描くことで表現してありますが、沖縄近海で動きが遅くなり、迷走する可能性もでています。

 台風5号は、8月の台風らしくない早い速度で北上しましたが、台風7号は8月の台風らしく遅い速度の台風になりそうです。

群馬県で40度突破

 日本の南海上で台風や熱帯低気圧に伴う上昇流によって上空に運ばれた空気は、対流圏上部で北に運ばれ、日本を覆っている太平洋高気圧を強化します。

 日本の南海上の台風ラッシュは、太平洋高気圧の強化をもたらし、各地での気温上昇をもたらします。

 暑さはしばらく続くことになりますが、太平洋高気圧のまわりを北上してくる暖気は湿っており、湿度の高い暑さ、つまり、熱中症なる危険性が高い暑さとなる見込みです。

 気象庁と環境省は8月6日夕方に、東京都、千葉県、茨城県に「熱中症警戒アラート」を発表し、8月7日は、外出はなるべく避け、室内をエアコン等で涼しい環境にして過ごしてくださいと呼び掛けています。

 これが、「熱中症警戒アラート」の初めての発表です。

 その後も、連日「熱中症警戒アラート」を発表し、8月11日は関東の1都6県と山梨県に対しての発表となっています(表)。

表 「熱中症警戒アラート」が発表された日(対象の1都8県)
表 「熱中症警戒アラート」が発表された日(対象の1都8県)

 8月11日14時現在、群馬県伊勢崎で40.4度、埼玉県鳩山で40.2度と最高気温が40度をこえており、関東各地では殺人的な暑さとなっています。

 夕方以降までは「極めて危険」や「危険」な状態ですので、不要不急の外出はさけ、熱中症に厳重警戒です(図3)。

図3 群馬県伊勢崎の暑さ指数の推移(8月11日、13時以降は予報)
図3 群馬県伊勢崎の暑さ指数の推移(8月11日、13時以降は予報)

 ただ、「熱中症警戒アラート」は、令和3年度(2021年度)から全国展開を予定していますが、現時点では、関東甲信地方だけを対象とした情報です。

 つまり、8月11日は1都7県だけが熱中症に厳重警戒すればよいわけではありません。

 気象庁が高温注意情報を発表しているほぼ全国でも「熱中症警戒アラート」が発表するような状態になる可能性があります(図4)。

図4 高温注意情報を発表している都道府県(オレンジ色の地方)
図4 高温注意情報を発表している都道府県(オレンジ色の地方)

 今週は、周囲をみて、こまめにマスクをはずしたり、水分補給をするなど、熱中症対策が必要な一週間です。

 防げる熱中症は防がないと、新型コロナウィルス対策で極度に忙しくなっている医療機関に、さらなる負担をかけることになります。

 気温に関する情報の入手に努め、熱中症対策も新型コロナウィルス対策の一環と考えて欲しいと思います。

 同時に、日本のすぐ近くで台風が発生し、すぐに日本に影響がでてくる可能性がありますので、台風にも注意してください。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図4 気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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