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4連休はオリンピックの涙雨というより危険な雨

饒村曜気象予報士
タイトル画像 朝鮮半島から日本海南部に延びる梅雨前線(7月22日15時)

スポーツの日

 令和2年(2020年)は7月23日(木)が「海の日」で祝日、翌24日(金)も「スポーツの日」で祝日です。

 昭和39年(1964年)10月10日に開幕した東京オリンピックを記念して、昭和41年(1966年)から「体育の日」が祝日になりました。

 当初、「体育の日」は東京オリンピックの開幕日である10月10日でしたが、平成12年(2000年)から10月の第2月曜日に変更され、平成22年(2020年)から「スポーツの日」と名称変更になっています。

 そして、令和2年(2020年)、一年限りで7月24日に変更となったのは、東京オリンピックの開会式の日に合わせるためです。

 「海の日」「スポーツの日」の祝日と、土日を含めての4連休は、オリンピックムードが最高潮に盛り上がるはずでした。

 しかし、世界的なコロナナウィルスの流行で東京オリンピックが一年延期となり、東京都では連日200人程度の新型コロナウイルス感染者が確認されています。

 小池東京都知事は「この4連休、都民の方、とりわけ高齢者や既往症もつ方は外出を控えていただきたい」と呼び掛けており、半年前には想像だにできなかったことが起きています。

 昭和39年(1964年)10月10日の東京オリンピック開幕日は、「オリンピック晴れ」と呼ばれるほどの晴天でした。

 しかし、56年後、令和2年(2020年)7月24日の幻のオリンピック開幕日は、梅雨前線と、梅雨前線上で発生した発達中の低気圧の通過で、外出自粛を促すような涙雨の予報です(図1)。

図1 予想天気図(7月24日9時の予想)
図1 予想天気図(7月24日9時の予想)

 梅雨前線上に発生し、発達している低気圧に向かって南海上から暖かくて湿った空気が西日本を中心に流入する見込みです。

 加えて、湿った暖かい空気が流入している所に、強いに日射によって下層が温められると、大気が非常に不安定となります。

 局地的に各地で積乱雲が発達し、短時間強雨や落雷、竜巻などの突風の可能性が高くなります。

 屋外で黒い雲が見えたら、発達中の積乱雲が近くにいますので、素早く安全な建物の中への避難が必要です。

 そして、建物の中では密な状態を避けましょう。

 

4連休の天気

 気象庁が発表した週間天気予報によると、梅雨がないとされる北海道と、梅雨明けした沖縄・奄美地方を除くと、ほとんどの日が傘マーク(雨の日)です(図2)。

図2 各地の4連休の天気予報(数値は最高気温)
図2 各地の4連休の天気予報(数値は最高気温)

 まさに梅雨本番です。

 令和2年(2020年)の梅雨は、7月3日以降、梅雨前線がほぼ同じ位置に停滞し、雨の日が続きましたが、これは例外です。

 梅雨の期間であっても、連日雨や曇りの日ではなく、梅雨の晴れ間があるのが普通で、4連休の梅雨も、そのような雨の降り方です。

 ただ、4連休の雨は、涙雨というような感傷的な雨ではなく、西日本を中心に災害をもたらす可能性がある危険な雨です。

 気象庁では、5日先までに警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で表現していますが、これによると、7月24日(金)、25日(土)ともに、九州北部が「高」なっています(図3)。

図3 早期注意情報(7月18日~19日の予想)
図3 早期注意情報(7月18日~19日の予想)

 また、西日本を中心に、4連休のすべての日で「中」の府県があります。

 低気圧がゆっくり東進することで、大雨警報を発表するほどの強い雨が降る可能性が長く続きますので、警戒が必要です。

 予想24時間雨量をみると、7月24日(金)に強い雨が降るのは九州から四国地方、25日(土)に強い雨が降るのは四国から東海地方と、強い雨の範囲が東へ移動しています(図4)。

図4 予想24時間雨量分布(上段は7月24日、下段は7月25日)
図4 予想24時間雨量分布(上段は7月24日、下段は7月25日)

 今年の梅雨の特徴は、梅雨後半になっても、夏の主役の太平洋高気圧がなかなか強くならないことがあげられます。

 例年の今頃であれば、太平洋高気圧が強まって梅雨前線が東北地方まで北上し、関東から西の地方では梅雨明けになっています。

 しかし、令和2年(2020年)は、沖縄県と鹿児島奄美地方しか梅雨明けしていません(表)。

表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け
表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け

 その奄美地方も平年よりかなり遅く、最遅記録となる7月20日でした。

熱中症に警戒

 全国のアメダスで気温を観測している921地点で、真夏日を観測した地点数を見ると、多くの地方が梅雨入りした6月上旬に急増しています(図5)。

図5 全国の真夏日地点数と夏日地点数
図5 全国の真夏日地点数と夏日地点数

 梅雨末期のような気温が高い梅雨入りでした。

 その後、気温が下がり、梅雨初期のような気温で経過してきましたが、7月19日頃から真夏日が急増し、梅雨末期らしくなってきました。

 7月20日は、真夏日が529地点と、全体の57%にも達しています。

 梅雨期間といっても、梅雨の晴れ間で日射があると、すぐに真夏日(最高気温が30度以上)となる季節になっています。

 4連休の最高気温の予報は、平年よりは若干低いものの、ほとんどの地方は夏日(最高気温が25度以上の日)が続きます。

 そして、梅雨の晴れ間で日射があると、所により真夏日(最高気温が30度以上)となる可能性があります。

 今年は、新型コロナ対策としてマスク着用が新しい日常です。

 マスクをしていると、熱中症になりやすいといわれていますので、熱中症には例年以上に厳重な警戒が必要です。

 

タイトル画像、図1、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:ウェザーマップ資料より著者作成。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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