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東京初の真夏日 真夏のような気温から一斉に梅雨入りの可能性あり

饒村曜気象予報士
梅雨前線に伴う雲と地上天気図(6月9日15時)

夏を思わせる暑さ

 九州の南海上に東西に延びる梅雨前線が停滞し、その梅雨前線に向かって雨雲が北上しています。

 梅雨前線に沿って雨雲が東西に広がることが多いのですが、今回は、梅雨前線上に飛び飛びに雲の塊があり、そこに南海上から雲の塊が北上しています(タイトル画像参照)。

 6月9日(火)は、梅雨前線の北側は大きな高気圧に覆われ、広い範囲で晴れて強い日射に加え、高気圧の縁辺をまわるように暖かい空気が北上しました。

 このため、関東内陸部から西日本の日本海側を中心に真夏の暑さとなり、福岡県太宰府市など6地点で最高気温が35度以上の猛暑日となりました(表1)。

表1 猛暑日の観測(6月9日)
表1 猛暑日の観測(6月9日)

 また、最高気温が30度以上の真夏日は東京・千代田区で31.0度を観測するなど321地点(気象庁で気温観測をしている921地点の35パーセント)で、最高気温が25度以上の夏日は720地点(78パーセント)で観測するなど、全国的に夏を思わせる暑さでした。

 猛暑日、真夏日、夏日ともに今年最多の地点数で、東京・千代田区の真夏日は今年初です(図1)。

図1 夏日・真夏日を観測した地点数(5月1日~6月9日)
図1 夏日・真夏日を観測した地点数(5月1日~6月9日)

北上する梅雨前線

 6月10日(水)は、梅雨前線が西日本から北上する見込みです(図2左)。

図2 予想天気図(左:6月10日9時の予想、右:6月11日9時の予想)
図2 予想天気図(左:6月10日9時の予想、右:6月11日9時の予想)

 このため、東海から西日本では雨となる予報ですが、関東から東北地方を中心に真夏日や猛暑日となる予報です(図3)。

図3 令和2年(2020年)6月10日の予想最高気温
図3 令和2年(2020年)6月10日の予想最高気温

 6月11日(木)は梅雨前線がさらに北上し、東北南部から北陸、関東まで雨となりますので、気温は週前半より少しさがります。

 週前半の夏のような気温は一服しますが、それでも気温が高い日が続きます。

沖縄の梅雨明けと関東甲信などの梅雨入り

 北上した梅雨前線は、そのまま本州付近で停滞する見込みです。

 このため、各地の週間天気予報では、那覇では6月12日(金)頃から晴れの日が多くなります(図4)。

図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 沖縄の梅雨明けの平年値は6月23日(火)ですが、6月12日(金)には梅雨明けの可能性があります。

 沖縄の梅雨明けの早い記録は、平成27年(2015年)の6月8日ですので、記録更新とはなりませんが、かなり早い梅雨明けということができると思います。

 また、東海から九州北部にかけては、6日10日(水)から雨の日が続きますので、この日に梅雨入りの可能性があります。

 東海から九州北部にかけて、6月10日(水)に梅雨入りしたとすると、平年より遅い梅雨入りということになります(表2)。

【追記(6月10日11時30分)】

気象庁は、6月10日11時に、東海、近畿、中国地方で梅雨入りしたと発表しました。

表2 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け
表2 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け

 さらに、関東甲信から北陸、東北南部は、6月11日(木)以降、雨の日が続く予報です。

 関東甲信から北陸、東北南部は、6月11日(木)に梅雨入りの可能性があります。

 6月11日(木)に梅雨入りなら、関東甲信は平年より遅い梅雨入りですが、北陸と東北南部は平年より遅い梅雨入りとなります。

 つまり、10日(水)から11日(木)にかけて、東北南部から九州北部までの広い範囲で、ほぼ一斉に梅雨入りの可能性があります。

 大気中に含むことができる水蒸気の量は、気温によって変わります。

 気温が高いほど、大気中に含むことができる水蒸気の量が多くなり、それだけ多くの雨が降る可能性が高くなります。

 梅雨末期は梅雨初期より気温が高くなっていますので、それだけ大雨の可能性が高くなります。

 「梅雨末期豪雨」という言葉があるくらい豪雨が多くなります。

 ただ、令和2年(2020年)の梅雨は、梅雨初期から気温が高くなっていますので、梅雨入り直後から大雨の可能性があります。

 気象庁が6月9日(火)に発表した早期警戒情報では、6月10日(水)に鹿児島県で、11日(木)~12日(金)には西日本の広い範囲で、大雨警報発表の可能性が「中」となっています(図5)。

図5 大雨警報の可能性(左:6月11日、右:6月12日)
図5 大雨警報の可能性(左:6月11日、右:6月12日)

 梅雨入りと同時に、梅雨末期と同様な警戒が必要です。

例年以上に暑さに注意

 沖縄では、平年より早く梅雨明け後は、夏本番となり、真夏日が続きます。

 熱中症に対して厳重な警戒が必要です。

 梅雨入りをして雨が降ると、梅雨入り前の晴れていたときより気温が若干下がりますが、湿度が高くなりますので、熱中症に対して危険性が少なくなったわけではありません。

 梅雨前線の北側にいるときの晴天による高温は、大陸育ちの高気圧に覆われていますので、比較的湿度が低く、6月9日(火)に東京都千代田区で今年初めて30度を超した時刻の相対湿度は50パーセントくらいでした。

 それが、梅雨入り後は太平洋高気圧に覆われますので、相対湿度が高くなり、雨が降れば100パーセント近くになります。

 沖縄以外の地方でも、沖縄と同様に熱中症に厳重な警戒が必要です。

 特に、令和2年(2020年)は、新型コロナウイルス対策が最優先です。

 しかし、新型コロナウィルス対策の多くは、外出には水分補給がしにくいマスクの着用や、頻繁に換気が必要なことから効果的に冷房できないことなど、熱中症になりやすいものが多く含まれています。

 また、熱中症の症状は、新型コロナウイルスに感染した時の初期症状に似ていることから、まず新型コロナウイルスに感染している可能性があると思って重装備をしてから医療行為をする必要があります。

 つまり、熱中症患者は、医療機関に過度の負担をかけることになりますので、熱中症にならないというのも、大きな新型コロナ対策です。

 熱中症対策は、夏日と聞いたら「真夏日なみ」に、真夏日と聞いたら「猛暑日なみ」に置き換え、例年より低い気温の時から始めることが大事です。

タイトル画像、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表1の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図2、表2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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