Yahoo!ニュース

「花冷えの寒の戻り」から「初夏の週末・菜種梅雨」

饒村曜気象予報士
群馬県 赤城南面千本桜 桜と菜の花(写真:アフロ)

三連休明けの寒の戻り

 令和2年(2020年)3月の三連休最後の日曜日である22日は、日本海の低気圧に向かって暖気が北上したため、関東地方を中心に全国的に気温が高くなりました。

 東京都・青梅で最高気温が27.1度、埼玉県・秩父で26.7度となるなど、本州では、令和2年(2020年)で初めて夏日(最高気温が25度以上の日)を観測しました。

 また、東京では、沖縄・奄美以外で最初にさくらが満開となりました。

 さらに、名古屋でさくらが開花するなど、関東から九州北部で開花が進みました。

 さくらの開花が広がったのですが、三連休明けは寒の戻りで始まりました。

 強い寒気の目安として、日本の上空約5500メートルの気温が氷点下30度以下というものがありますが、この寒気が関東北部まで南下してきたからです(図1)。

図1 日本の上空約5500メートルの気温分布予報(3月24日未明)
図1 日本の上空約5500メートルの気温分布予報(3月24日未明)

 さくらが咲くころの寒さには、「花冷え」の他に、「余寒」や「春寒」などの呼び名がありますが、この寒さは晩春の頃によく使う「寒の戻り」という呼び名のほうが適切です。

 冬の間から、春のように気温の高い日が続き、そのあとの一時的な強い寒さであるからです。

 令和2年(2020年)は、季節が1~2か月早く進んでいる感じがします。

東京の気温予報

 令和2年(2020年)3月の東京は、最高気温や最低気温が平年より高い日が多く、時々、寒の戻りで気温が低くなっても、ほぼ平年並みの気温でした(図2)。

図2 東京の最高気温予報の上限と下限、および最低気温の予報(3月24~30日は気象庁、3月31日~4月8日はウェザーマップの予報)
図2 東京の最高気温予報の上限と下限、および最低気温の予報(3月24~30日は気象庁、3月31日~4月8日はウェザーマップの予報)

 最高気温は、3月15日頃の寒の戻りに続いて、三連休明けの23日からの寒の戻りで下がることもありました。

 しかし、これから週末にかけて、気温はどんどん上昇します。

 最高気温の予報の上限では、連日20度を超すようになり、初夏のころの気温になります。

 そして、来週、3月最後の週は、再び寒の戻りというより、最高気温の予報の上限と下限は、平年値をはさんだ状態です。

 先の話で誤差が大きいのですが、最高気温は平年値の前後ということで、寒の戻りというより、季節外れの暖かさから季節通りの暖かさに気温が下がったということもできそうです。

 この傾向は、東京だけでなく、ほぼ全国的です。

 例えば、札幌では図3のようになります。

図3 札幌の最高気温と最低気温の予報(3月24~30日は気象庁、3月31日~4月8日はウェザーマップの予報)
図3 札幌の最高気温と最低気温の予報(3月24~30日は気象庁、3月31日~4月8日はウェザーマップの予報)

 このような気温変化は、低気圧と高気圧が交互に通過することで生じます。

 高気圧が通過するときには晴れて気温が上昇し、高気圧の通過後や低気圧の接近で南から暖気が北上して気温がさらに上昇します。

 そして、低気圧が通過した後に寒気が南下して気温が下降するからです。

来週は南岸低気圧

 同じ寒の戻りでも、3月最後の週の寒の戻りは、それまでの寒の戻りと少し違います。

 今週は晴れマークの日が続き、降水の有無の信頼度は、5段階表示で一番高いAが多いので、雨が降る心配はほとんどありません。

 しかし、今週末からの一週間は、傘マークや黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が多くなります(図4)。

図4 東京の16日先までの天気予報
図4 東京の16日先までの天気予報

 降水の有無の信頼度が5段階表示で、下から2番目のDの日が多いのですが、今週とは様変わりになります。

 その次の週は、降水の有無の信頼度が5段階表示で一番低いEですが、連日、晴れマークがついています。

 同時に、ほとんどの日で黒雲マークもついており、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)は1日しかありません。

 これは、日本の東海上に前線が停滞し、東日本から西日本の太平洋側で雨や曇りの日が多くなることを示唆しています。

 「菜の花が咲くころ(3月下旬から4月上旬)の梅雨のような天気」ということから、「菜種梅雨」の可能性があります。

 一般的に菜種梅雨は、本来の梅雨より雨量が少ないのですが、時によっては、大雨となって災害が発生する可能性もあります。

 雨の降り方に注意が必要な季節が近づいてきました。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事