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台風被災地は週末の低気圧の雨に続き、台風20号の影響にも警戒

饒村曜気象予報士
低気圧の雲(A)と台風20号の雲(B)、台風の卵の雲(C)(10月17日12時)

週末の雨

 日本の南に停滞している前線がこれから北上し、前線上で発生した低気圧が三陸沖で発達する見込みです(図1)。

図1 予想天気図(10月19日21時の予想)
図1 予想天気図(10月19日21時の予想)

 このため、10月18日(金)から19日(土)にかけて、東日本と東北地方には暖かく湿った空気が流れ込み、東日本では大気の状態が不安定となります。

 東日本と東北地方の広い範囲で雨が降り、18日夜遅くから19日昼過ぎにかけては太平洋側沿岸部を中心に激しい雨が降り、大雨となる所があるでしょう。

 また、局地的に風も強まる可能性があります。

台風15号の被災地の雨と風

 令和元年(2019年)9月5日15時に南鳥島近海で発生した台風15号は、発達しながら北西に進み、暴風域を伴って小笠原諸島に接近、勢力を維持しながら伊豆諸島近海を北上しました。

 そして、強い勢力で9日3時頃に三浦半島付近を通過、同日5時前に千葉市付近に上陸しました。

 台風の接近・上陸により、関東地方では猛烈な風が吹き、東京都神津島で58.1メートル、千葉県千葉市で57.5メートルの最大瞬間風速を観測しました。

 東京都で道路を歩いていた女性が強風にあおられて建物の外壁にぶつかり、また、千葉県では台風に伴って発生したと思われる突風によって軽トラックが横転して男性がなくなりました。

 住家被害は千葉県を中心に、3万9828棟(全壊家屋219棟を含む)と、浸水被害197棟を大きく上回り、典型的な風台風でした。

 台風19号が接近する直前の10月10日、フジテレビの「めざましテレビ」という番組で、千葉県鋸南町にゆきました。

 台風15号被災地では、近づく台風19号にどう備えるべきかという趣旨です(放送は11日)。

 その時に見た風景は、台風15号から1ヶ月経過したのに、被害を受けた場所では、ほとんどの屋根にかけられたブルーシートによって、一面が青い海でした。

 そして、住民の方々は、襲来する台風19号に備えて、屋根のビニールシートの土嚢の数を増やしたり、車庫のシャッターの前に土嚢を摘んだり、板を打ちつけたりという減災活動を行っていました。

 そこに、台風19号による暴風と大雨があり、さらに、今度の週末は低気圧による雨や風が加わります。

 マスコミ等によって、週末の雨によって被災地では厳重な警戒が呼びかけられていますが、ともすると、呼びかけは台風19号の被災地だけです。

 たしかに、台風19号の被災地も危険なのですが、関東地方で雨や風が強いのは千葉県南部です(図2)。

図2 雨と風の分布予報(10月19日6時の予報)
図2 雨と風の分布予報(10月19日6時の予報)

 雨や風が強まるのは19日(土)の明け方ですので、千葉県南部の台風15号の被災地では厳重な警戒が必要です。 

台風19号の影響

 10月6日3時にグアム島のあるマリアナ諸島の東海上で発生した台風19号は、西進しながら発達し、マリアナ諸島近海において大型で猛烈な台風となりました。

 台風はその後、勢力をあまり落とすことなく北上し、八丈島近海から向きを東寄りに変え、父島近海を通り、12日19時前に強い勢力で静岡県伊豆半島に上陸しました。

 神奈川県箱根で総雨量が1000ミリを超えるなど、東北から東日本では400ミリを超える雨となりました。

 台風19号の雨は「平年の10月雨量の3倍以上」だったとか、「平年の年間雨量(降水量)の40パーセント以上」だったという観測地点が相次いでいます。

図3 台風19号の総雨量分布(10月10日~13日)
図3 台風19号の総雨量分布(10月10日~13日)

 この、台風第19号による記録的な大雨により、広域関東圏(関東甲信地方、新潟県、静岡県)と東北太平洋側(福島県、宮城県、岩手県)では、多くの河川で氾濫や決壊が発生しました。

 台風19号の最大風速は、東京都羽田で34.8メートル、東京都江戸川臨海で32.6メートル、最大瞬間風速は、東京都神津島で44.8メートル、東京都江戸川区で43.8メートルなどで、強い風による被害も相次いでいるのですが、雨による被害が非常に大きく、典型的な雨台風でした。

 気象庁では、台風19号による大雨で河川堤防等が損傷を受けた地域や地盤が緩んでいる地域では、通常よりも少ない雨量で洪水や土砂災害の危険度が高まるおそれがあるとして、警戒を呼びかけています。

 普段であれば、大災害を引き起こすような雨量ではありませんが、台風の被災地では、低気圧や河川の増水や氾濫に警戒し、土砂災害や低い土地の浸水に警戒が必要です。

図4 今後36時間の雨の分布予想(10月18日15時~20日3時)
図4 今後36時間の雨の分布予想(10月18日15時~20日3時)

台風20号の影響

 台風20号が10月18日(金)3時にフィリピンの東海上で発生し、現在はほとんど停滞していますが、今後、西進のち北進と進路を変え、21日には沖縄にかなり接近する見込みです(図5)。

図5 台風の進路予報(10月18日15時の予報)
図5 台風の進路予報(10月18日15時の予報)

 台風の進路予報は、最新のものをお使い下さい。

 沖縄や奄美地方では、19日(土)は台風周辺の発達した雨雲がかかり、局地的に雷を伴い激しく降る所があるでしょう。

 この台風20号は、22日(火)には沖縄近海で温帯低気圧に変わる見込みですが、温帯低気圧は北東進して、来週半ばの西日本から北日本の広い範囲に影響を与えそうです。

 台風15号と台風19号の被災地では、週末の低気圧に伴う雨だけでなく、来週半ばの台風20号の雨にも警戒が必要です。

タイトル画像、図2、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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