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13都県に大雨特別警報 狩野川台風の大雨に似ている台風19号の雨

饒村曜気象予報士
台風19号の雲(10月12日14時20分)

台風19号上陸へ

 大型で非常に強い台風19号は、12日夕方から夜にかけて静岡県から関東地方に上陸する見込みです(図1)。

図1 台風19号の進路予報(10月12日15時の予報)
図1 台風19号の進路予報(10月12日15時の予報)

 台風の進路予報は最新のものをお使い下さい。

 東日本を中心に広い範囲で猛烈な風が吹き、猛烈なしけとなっています。

 暴風や高波、高潮、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください。

台風19号の雨

 昭和33年(1958年)の狩野川台風の時のように、台風前面の東よりの風が吹き続けている伊豆半島から関東の西部の山地では、特に記録的な大雨となっています。

 10月11日16時から12日15時までの24時間降水量は、神奈川県箱根で860.5ミリ、静岡県湯ヶ島で614ミリ、東京都小河内418ミリなど、すでに400ミリを超えています(図2)。

図2 これまでの24時間降水量(10月11日16時から12日15時まで)
図2 これまでの24時間降水量(10月11日16時から12日15時まで)

 そして、今後の降水量をみると、伊豆半島から関東の西部の山地では、さらに200ミリ程度の雨が降る見込みです。

 また、新潟県上越地方で400ミリを超える雨が予想されるなど、大雨の範囲は北陸から東北南部に広がる見込みです(図3)。

図3 これからの36時間降水量(10月12日15時から14日3時まで)
図3 これからの36時間降水量(10月12日15時から14日3時まで)

大雨特別警報

 気象庁では、10月12日15時32分に群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県に大雨特別警報を発表しました。

 気象情報は、見出しに続けて本文が入りますが、特別警報の発表を知らせる第70号の気象情報は本文なしです。

 緊急性が高い時に発表する「見出しのみの気象情報」です。

記録的な大雨に関する全般気象情報 第70号

令和元年10月12日15時32分 気象庁予報部発表

(見出し)

群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県に大雨特別警

報を発表しました。これまでに経験したことのないような大雨となっていま

す。何らかの災害がすでに発生している可能性が高く、警戒レベル5に相当

する状況です。最大級の警戒をしてください。

(本文)

なし。

 東北地方から東日本、西日本の広い範囲に対して、特別警報、土砂災害警戒情報付きの警報、警報、注意報が発表されています(図4)。

図4 各地の特別警報、警報、注意報の発表状況(10月12日15時45分)
図4 各地の特別警報、警報、注意報の発表状況(10月12日15時45分)

 特別警報等は最新のものを利用してください

【追記(10月12日20時)】

 大雨特別警報は、10月12日19時50分に、茨城、栃木、新潟、福島、宮城の5県でも発表となりました。

 これで、12都県で大雨特別警報が発表となりました。

 前年の「平成30年(2018年)7月豪雨(通称は西日本豪雨)」のときの11府県での特別警報発表を上回り、過去最多の発表となっています。

【追記(10月13日1時)】

 大雨特別警報は、10月13日0時40分に、岩手県でも発表となりました。

 これで、13都県で大雨特別警報が発表となりました。

 一方、台風の通過に伴い、静岡県など南に位置する都県から順次、大雨特別警報は大雨警報に切り替えとなっています。

大洪水の危険

 気象庁は、台風19号について、狩野川台風クラスの台風と警戒を呼びかけました。

 狩野川台風は伊豆半島の狩野川周辺で1000名近くがなくなり、この名称になっていますが、東京や横浜でも大雨が降り、新興住宅地などで崖崩れが相次ぎ、大きな被害が発生した台風です。

 東京や横浜では100年以上の気象観測がありますが、24時間雨量の最大値は、今でも狩野川台風のときに記録したものです(表)。

表 東京と横浜の雨量の記録
表 東京と横浜の雨量の記録

 伊豆半島から関東の西部の山地の記録的な大雨は、狩野川台風のような降り方をしており、下流の各河川で大洪水を発生させる危険な状態になっています。

 狩野川下流域の洪水防止のため、昭和26年(1951年)に静岡県田方郡江間村(現 伊豆の国市)と江浦湾を結ぶ放水路として狩野川放水路の建設が始まりました。

 しかし、予算難から計画は遅れに遅れ、完成の見込みが立たない状況でしたが、昭和33年の狩野川台風によって完成が急がれ、2本トンネル計画を3本トンネルに拡充した放水路が完成したのは昭和40年(1965年)7月のことです。

 この狩野川放水路のトンネルの大きさは、メンテ作業中のトラックの大きさと比べるとよくわかります(写真)

写真 狩野川放水路のトンネル(平成20年のメンテ作業中の写真)
写真 狩野川放水路のトンネル(平成20年のメンテ作業中の写真)

 狩野川放水路は、その後の狩野川本川の洪水を防いでいます。

 例えば、平成16年(2004年)10月の台風22号では、狩野川台風以後で最大の流量がありましたが、狩野川放水路により2.5メートルも水位を下げています。

 狩野川放水路だけでなく、各地で様々な洪水対策が大規模におこなわれています。

 しかし、静岡県から関東地方で、狩野川台風なみの大雨が降っていないことは事実です。

 広い範囲の大雨ですので、荒川、多摩川、鶴見川などの大河川の水位があがって洪水の心配がありますが、これらの大河川に流れ込む支川は流下することが出来なくなったり、逆に、大河川から支川へ逆流して支川が氾濫する可能性があります。

 何が起こるかわからないということで、最大限の警戒が必要です。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁資料より著者作成。

写真の出典:饒村曜(平成22年(2010年))、静岡の地震と気象のうんちく、静岡新聞社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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