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台風15号の被災地、天気図に表れない雲の塊に注意

饒村曜気象予報士
沖縄の南にある熱帯低気圧の雲と関東の南海上の雲(9月13日9時)

2つの雲の塊

 日本の南海上には、広い範囲で気圧が低くなっており、この中で西部と東部にまとまった雲の塊が存在するという珍しい気象現象となっています(タイトル画像参照)。

 気圧が低くなっている範囲の西部には、熱帯低気圧に対応する雲があり、北上しています(図1)。

図1 地上天気図(9月13日21時)
図1 地上天気図(9月13日21時)

 この熱帯低気圧は、2日間ほど「今後24時間以内に台風にまで発達する」と予告されていましたが、あまり発達せず、9月13日21時に予告はとりけされました。

 最大風速が17.2メートルに達しないということでの取り消しですが、強い雨雲を伴ない、ゆっくり北上中です。

 また、気圧が低くなっている範囲の東部には、熱帯低気圧に伴う雨雲より大きな雨雲があって北上していますが、地上天気図では表れていません。

 停滞前線の南側に、気圧が低くなっている領域(気圧の谷)ができているだけす。

【追記(9月14日10時)】

 熱帯低気圧は、9月14日3時の解析においてなくなり、広い範囲で気圧が低くなっている低圧部に戻りました。

 低圧部は低気圧と違って中心がはっきりしませんので、中心を示す×印はありません。

 ただ、広い範囲で気圧が低くなっているところに、2つの大きな雨雲が存在し、ともに北上している状況に変わりはありません。

図6 地上天気図(9月14日3時)
図6 地上天気図(9月14日3時)

雨雲の北上

 日本の南海上の雲の北上示したのが図2、それをラフなスケッチをしたのが図3です。

図2 気象衛星から見た日本の南海上の雲の北上
図2 気象衛星から見た日本の南海上の雲の北上
図3 図2のラフなスケッチ
図3 図2のラフなスケッチ

 熱帯低気圧に伴う雨雲は北上し、敬老の日を含む三連休の半ば以降は沖縄に影響しそうです。

 また、地上天気図では表れていない雨雲も、北上して三連休の半ば以降に東日本に接近しそうです。

 となると、図1で関東の南海上にある停滞前線に、この雨雲、しかも熱帯育ちで水蒸気をたっぷり含んだ雨雲が重なります。

千葉県の雨

 週間天気予報によると、台風15号で大きな被害を受け、復旧作業が完了していない千葉県などの被災地では、来週の半ばころまで雨が続く見込みです(図3)。

図4 各地の週間天気予報(ウェザーマップによる)
図4 各地の週間天気予報(ウェザーマップによる)

 「前線と台風の危険な組み合わせ」に似ている状況になりますので、大雨に注意や警戒が必要になるかもしれません。

 一刻も早い災害復旧と二次災害防止策が必要です。

 また、沖縄も15日以降は連日雨の予報ですので、こちらも雨に注意が必要です。

東・西日本の太平洋側の波

 日本の南海上は広い範囲で気圧が低くなっていますが、この気圧が低くなっている領域の縁辺部では、気圧傾度が大きく、やや強い風が吹き続けています。

 このため、東日本の太平洋側から、西日本の太平洋側、沖縄近海では波が高くなってきます(図5)。

図5 波の高さの予報(9月15日9時の予想)
図5 波の高さの予報(9月15日9時の予想)

 近くに台風や熱帯低気圧があるわけではありませんが、2~3メートルの波が高い状態です。

 三連休は、晴れて風が弱くても、東~西日本の太平洋側と沖縄では、海辺のレジャーは要注意です。

タイトル画像、図2、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図6の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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