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台風一過の猛烈残暑から並みの残暑へ

饒村曜気象予報士
すすき(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

台風15号の持ち込んだ暖気

 静岡県から関東地方に記録的な暴風をもたらし、9月9日5時前に千葉市付近に上陸した台風15号は、10日15時に日本の東海上で温帯低気圧に変わりました。

 この台風15号と、少し前に朝鮮半島に上陸した台風13号が持ち込んだ暖気に、晴れたことによる強い日射が加わり、日本列島は記録的な暑さが続いています。

 9月10日も、岐阜県多治見で最高気温が37.6度など、全国で気温を観測している926地点のうち、9パーセントにあたる79地点で最高気温が35度を超えて猛暑日になり、74パーセントにあたる681地点で最高気温が30度を超えて真夏日になりました。

 東京都心は、最高気温が35.6度となり、猛暑日となりました。

 図1は、9月10日14時の全国の気温分布ですが、関東や東海地方を中心に35度を超えているのがわかると思います。

図1 台風15号通過後の9月10日14時の全国の気温分布
図1 台風15号通過後の9月10日14時の全国の気温分布

平成最後の年の残暑と令和最初の年の残暑

 記録的な暑さとなった平成最後の年、平成30年(2018年)の猛暑日は、のべ日数が6000地点を超えています(図2)。

図2 猛暑日の延べ地点数(平成30年(2018年)と令和元年(2019年))
図2 猛暑日の延べ地点数(平成30年(2018年)と令和元年(2019年))

 これに比べれば、令和最初の年、令和元年(2019年)の猛暑日はのべ3000地点と平成最後の年の半分です。

 しかし、令和元年(2019年)は、7月末になるまで気温が上がらず、体が暑さに慣れないうちに急に暑くなったことから体に堪える暑さでした。

 そして、令和元年は(2019年)は、9月に入っても猛暑日が出現しています。

 平成30年(2018年)の9月1日以降の猛暑日は、のべ4地点しかありませんが、令和元年は9月1日以降、すでに、のべ258地点に達しています。

 単純計算では、約60倍です。

 このように、9月になっても、まだ体に堪える暑さが出現していますが、そろそろ猛暑日の峠が見えてきました。

前線を伴なった低気圧の通過

 9月11日(水)は、前線を伴った低気圧が北日本を通過します(図3)。

図3 予想天気図(9月11日9時の予想)
図3 予想天気図(9月11日9時の予想)

 このため、9月11日は、九州や沖縄では晴れる所が多いものの、その他の地域では曇りや雨で、北陸や北日本を中心に雷を伴った激しい雨の降る所もある見込みです。

 この低気圧が通過後は、全国的に気温が少し下がります。

 各地の10日間予報をみると、最高気温35℃以上の猛暑日がなくなります。

 猛暑日がなくなりますが、西日本を中心に30℃以上の真夏日が続く予報です(図4)。

図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 図3には、日本の南海上に熱帯低気圧がありますが、発生初期であることから動きの予報には難しいものがあります。

 さらに熱帯低気圧が発達して台風になるのか、あるいは、この熱帯低気圧が衰えて、近くに別の熱帯低気圧が発生し、それが台風になるのかは、現時点ではわかりませんが、週末から週明けの天気予報を変える可能性があります。

 とはいえ、猛烈残暑から、平年のような残暑となり、それがしばらく続くことは確かなようです。

東京都心の8月から9月の気温

 東京都心部の8月の最高気温は上旬・中旬に平年より高く、下旬は平年値を挟んでの高い低いとなりました。

 これに対し、8月の最低気温は、ほぼ全期間にわたり平年より高い状態でした。

 そして、9月上旬は、台風13号と15号が持ち込んだ南からの暖気に、強い日射が加わることで、最高気温・最低気温がかなり高くなりました。

 前線を伴なった低気圧が通過する11日以降は、9月上旬より気温が大きく下がる予報ですが、それでも平年より高い気温を予想しています(図5)。

図5 東京の令和元年(2019年)8月から9月の最高気温と最低気温(9月11~17日は気象庁の予報、9月18~20日はウェザーマップの予報)
図5 東京の令和元年(2019年)8月から9月の最高気温と最低気温(9月11~17日は気象庁の予報、9月18~20日はウェザーマップの予報)

 台風一過の猛烈残暑は解消しますが、しばらくは並みの残暑は続きますので、「まだ夏の延長」ということを意識し、引き続き熱中症対策に心がけてください。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図5の出典:気象庁資料を基に著者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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