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例年と違って西日本中心の秋雨前線

饒村曜気象予報士
秋雨前線と台風11号と台風の卵(令和元年(2019年)8月25日9時00分)

秋雨前線による大雨

 秋雨前線が西日本から東日本の南海上に停滞しています。

 令和元年(2019年)8月25日朝に台湾海峡にあった台風11号は、そのまま西進を続けて中国の華南に進んで熱帯低気圧となって消滅する見込みですが、そのあとを追うように熱帯低気圧がフィリピンの東海上に出現します(図1)。

図1 予想天気図(8月26日21時の予想)
図1 予想天気図(8月26日21時の予想)

 一般に、秋雨前線による大雨は、西日本より東日本で多く発生します。

 梅雨前線による大雨は、逆に東日本より西日本で多く発生します(図2)。

図2 東京と大阪の半旬ごとの降水量の平年値
図2 東京と大阪の半旬ごとの降水量の平年値

 半旬ごとの降水量の平年値が、おおむね30ミリ以上を雨の多い期間とすると、東京では6月第4半旬(16~20日)から7月第2半旬(6~10日)と、8月第6半旬(26~31日)から10月第3半旬(11~15日)が雨の多い期間です。

 もちろん、前者が梅雨期間、後者が秋雨期間です。

 これに対し、大阪では6月第4半旬(16~20日)から7月第2半旬(6~10日)が梅雨期間に対応する雨が多い期間で、雨量は東京を上回っていますが、秋雨期間に対応する雨の多い期間はありません。

 しかし、令和元年(2019年)の秋雨前線は西日本中心です。

 8月25日(日)は、秋雨前線が停滞している九州や四国では曇りや雨となり、九州南部では雷を伴って激しく降る所もある見込みですが、秋雨前線が南下している東日本では晴れ又は曇りとなっています。

 また、北陸~東北の日本海側では、上空に寒気が入っているため雨で所により雷を伴って激しく降る見込みです。

 一方、台湾海峡の台風11号は西進を続け、26日未明までには中国の華南で熱帯低気圧に変わる見込みです。

雨が多い西日本

 各地の10日間予報を見ると、秋雨前線が停滞している西日本では、連日雨で、時折、雷を伴って強く降る予報です(図3)。

図3 各地の10日間予報
図3 各地の10日間予報

 これに対し、東日本では秋雨前線が北上する週末を除いて曇りや晴れで、特に、東京では連日晴れマークが続く予報です。

 ただ、北日本や梅雨前線が南海上に下がった時の東日本でも、上空に寒気が南下したときは大気が不安定となって、所により雷を伴って激しく雨が降る見込みです。

16日予報によると

 東京の16日先までの天気予報を見ると、8月28日までは傘マークや黒雲(雨が降りそうな曇り)マークがついていますが、それ以降はついていません(図4)。

図4 東京の16日先までの予報
図4 東京の16日先までの予報

 8月29日から9月4日まで、降水の有無の信頼度が5段階で一番高いAであるなど、週の後半以降は、台風の接近などがないかぎり晴れの天気が続きそうです。

 ただ、最高気温が35度以上の猛暑日の予報はありませんで、記録的ではないものの、例年並みの厳しい残暑が続きそうです。

 これに対し、西日本では、傘マークや黒雲マークの日が9月に入ってもでてきます。

 特に、九州南部は連日にわたって傘マークや黒雲マークです(図5)。

図5 鹿児島の16日先までの予報
図5 鹿児島の16日先までの予報

 ただ、9月2日以降は、降水の有無の信頼度が5段階で一番低いEであるなど、信頼度の低い予報ですが、秋雨前線の活動が活発であることを示しています。

 西日本では、秋雨に例年以上の警戒が必要ですが、気になるのはフィリピンの東海上で発生すると予想される熱帯低気圧の動向です。

 日本の南海上に要注意です。

タイトル画像、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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