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台風発生の兆し 秋雨前線と台風は危険な組み合わせ

饒村曜気象予報士
秋雨前線とフィリピンの東海上の熱帯低気圧の衛星画像(8月20日15時)

東京の8月の気温

 令和元年(2019年)の夏は、太平洋高気圧の勢力が強まった7月下旬から8月中旬にかけ、猛暑となりました。

 平成30年(2018年)の猛暑の時と比べると、暑さの程度は少し落ちるのですが、身体に堪える暑さでした。

 というのは、梅雨末期まで気温が上がらなかったため、7月下旬からの猛烈な暑さは、体が暑さになれていない段階できたためです。

 ただ、その暑かった夏も、そろそろ終わりそうです。8月下旬からは、ほぼ平年並みの暑さになるからです。

 東京も、8月21日以降は、最高気温が35度以上の猛暑日が出現しないという予報です。

 また、最低気温が25度以上の熱帯夜もほとんど出現しないという予報です(図1)。

図1 東京の8~9月の気温(8月21~27日は気象庁の予報、28日~9月5日はウェザーマップの予報)
図1 東京の8~9月の気温(8月21~27日は気象庁の予報、28日~9月5日はウェザーマップの予報)

 それでも、平年より少し気温が高めですが、着々と秋に向かっています。

秋雨前線と熱帯低気圧

 太平洋高気圧が後退した日本列島の上には停滞前線が出現するようになりましたが、これが秋雨前線です(図2)。

図2 地上天気図(8月20日15時)
図2 地上天気図(8月20日15時)

 台風は9月より8月のほうが、発生数、上陸数ともに多いのですが、「台風というと9月」のイメージがあります。

 これは、9月の台風は秋雨前線とからむことが多く、大きな被害が発生しやすいからです。

 現在、日本の南海上で次々に発生する小さな熱帯低気圧から暖湿気流が流入していますので、秋雨前線上で局地的な豪雨が降っていて、注意が必要です。

 さらに、フィリピンの東海上にある熱帯低気圧は、今後24時間以内に台風に発達すると気象庁は発表しています(タイトル画像と図2参照)。

台風11号が発生した場合

 フィリピンの東海上にある熱帯低気圧が台風11号に発達したとすると、過去の8月の台風発生海域から見ると、少し、低緯度での発生といえそうです(図3)。

図3 台風の発生海域(8月)
図3 台風の発生海域(8月)

 また、発生した場合の進行方向は、過去の8月の台風の進行方向から見ると、西北西になり、統計からいえば、その後、東シナ海を北上いうことになります(図4)。

図4 台風の海域別進行方向(8月)
図4 台風の海域別進行方向(8月)

 台風11号が発生するかどうか、また、発生した場合の進路については、今の段階でははっきりしていませんが、北上して日本に接近した場合、秋雨前線との関係で警戒が必要となります。

 フィリピンの東海上の台風発生に要注意です。

【追記(8月21日18時)】

 台風11号が、8月21日15時に、フィリピンの東海上で発生しました。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成、

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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