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近畿より東北南部の梅雨入りが早かった45年前は広い範囲で災害

饒村曜気象予報士
予想天気図(6月10日21時の予想)

東北南部も梅雨入り

 令和元年(2019年)6月7日に関東甲信・東海・北陸・東北南部で平年より1~5日早く梅雨入りをしました(表)。

表 令和元年の梅雨入り
表 令和元年の梅雨入り

 奄美・沖縄・九州南部では、5月中に梅雨入りしていますが、九州南部を除く西日本は、未だ梅雨入りをしていません。

 このため、昭和49年(1974年)以来、45年ぶりに、近畿より東北の梅雨入りが早くなりました。

 ただ、今から半世紀前は、気象庁の梅雨情報の揺籃期で、梅雨入り・梅雨明けの発表の仕方が異なっていました。

半世紀前の梅雨入りの発表の仕方

 昭和46年(1971年)までは、今と違って、北海道地方の梅雨入りと梅雨明けを発表していました。一方、沖縄は発表していません。

 本土復帰前だったからです。

 また、東北は南部と北部にわけていませんでした。

 昭和47年(1972年)になると、北海道は、梅雨入りや梅雨明けがはっきりしないとして発表しなくなります。

 しかし、この年の5月15日に沖縄(琉球諸島及び大東諸島)の施政権がアメリカ合衆国から日本国に返還となっていますので、沖縄の梅雨入り(5月11日と沖縄本土復帰の直前)と梅雨明けが発表となっています。

 北陸は新潟・富山・石川3県と福井県に2分割した時代や、新潟県と富山・石川・福井3県に2分割した時代がありました。また、東北を東北北部・東北南部に分割しない時代もありました。

 これらの経緯をへて、昭和50年(1975年)くらいから、現在のような発表区分になっています。

 また、現在は梅雨入り、梅雨明けの日に「ごろ」がついていますが平成7年(1995年)までは、「ごろ」はついていません。

 梅雨入りや梅雨明けは、明瞭な場合でも5日程度の遷移期間があるという意見から、梅雨入りと梅雨明けは「6月上旬の前半」とか、「7月下旬の後半」と半旬(5日)を用いた表現に変わったからです。

 しかし、これは分かりにくいと不評で1年で取りやめとなりました。

 つまり、現在と同じ、梅雨入りの遷移期間の最初の日と最後の日の中間の日に「ごろ」をつける、梅雨明けの遷移期間の最初の日と最後の日の中間の日に「ごろ」をつけるということが始まったのは、平成8年(1996年)ということになります。

昭和49年(1974年)の梅雨

 気象庁のホームページには、過去の災害事例として、昭和49年(1974年)の梅雨期間を中心とした災害が載っています。

 これによると、梅雨前線により全国で大雨となり、死者・行方不明者14名、住家全半壊約2000棟、浸水39万6000棟などの大きな被害が発生しています。

 オホーツク海高気圧が強く、亜熱帯高気圧(太平洋高気圧)の北上が弱かったために梅雨期間が長く続き、6月中旬から8月まで全国的に気温が低くなりました。

 その間、低気圧の通過や台風8号、台風8号とは別の熱帯低気圧が梅雨前線を刺激し、大雨が降っています(図1)。

図1 昭和49年の梅雨前線による総雨量(5月29日~8月1日)
図1 昭和49年の梅雨前線による総雨量(5月29日~8月1日)

 5月29日~8月1日の約2か月間の総雨量は、三重県尾鷲で1800ミリを超えています。

 昭和49年(1974年)の梅雨は、

〇 早い入梅

〇 顕著な梅雨前線の活動

〇 梅雨期の異常低温

〇 遅い梅雨明け 

という特徴があります。

 加えて、盛夏期も低温が持続しました。

 今年との類似で、非常に気になります。

令和最初の梅雨

 東日本から東北南部まで梅雨入りした6月7日以降、梅雨らしい天気図となってきました(タイトル画像参照)。

 ようやく、オホーツク海に高気圧が出現するようになり、東日本を中心に冷たくて湿った空気を送り込むようになっています(図2)。

図2 令和の東京の最高気温と最低気温(6月9~15日は気象庁、6月16日以降はウェザーマップの予報)
図2 令和の東京の最高気温と最低気温(6月9~15日は気象庁、6月16日以降はウェザーマップの予報)

 そして、まだ弱い太平洋高気圧との間で梅雨前線が形成されています。

 太平洋高気圧は、梅雨前線を押し上げる力がまだありませんので、梅雨前線は南西諸島で、しばらく停滞しそうですので、沖縄地方は雨に対する警戒の継続が必要です。

 梅雨入りが東北地方から遅れた西日本ですが、10日間予報を見ると、大阪では週明けから雨の日が3日ほど続くことから、週明けに近畿地方の梅雨入りがあるかもしれません。逆に3日ほどしか雨の日が続かないので、今回は見送りになるかもしれません(図3)。

図3 各地の10日間予報
図3 各地の10日間予報

 一方、中国・四国・九州北部は、来週の17日(月)頃までは晴れが続く見込みですので、しばらく梅雨入りはなさそうです。

タイトル画像、図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁資料、ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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