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ソメイヨシノの早い開花、されど昨年よりは

饒村曜気象予報士
桜(写真:アフロ)

桜の開花と満開

 桜の開花日とは、標本とする木で5~6輪以上の花が開いた最初の日をいいます。

 また、満開日とは、標本とする木で約80%以上のつぼみが開いた状態となった最初の日をいいます。

 桜と言っても、予報対象は、多くの地方ではソメイヨシノですが、ソメイヨシノが育たない沖縄・奄美ではヒカンサクラ、北海道の一部はエゾヤマザクラです。

 桜の開花から満開までの期間は、開花してからの気温が高いと短く、気温が低いと長いなど、年によって異なりますが、一般的に、ヒカンサクラはソメイヨシノより長く、11日から24日もあります。

 また、同じソメイヨシノでも、開花から満開までの期間は、九州から東海・関東地方で約7日、北陸・東北地方で約5日、北海道で約4日と、北の地方ほど短くなります。

 つまり、北国ほど桜の見ごろの期間が短くなります。

ヒカンサクラ

 沖縄・奄美地方では、多くの年は、ヒカンサクラが1月中旬に咲き始め、2月上旬に満開となります(表)。

表 ヒカンサクラの開花日と満開日
表 ヒカンサクラの開花日と満開日

 今年、平成31年(2019年)の桜の開花は、宮古島や沖縄本島那覇などで平年より早かったものの、満開までの期間が長いという特徴があります。

 宮古島では、1月7日に開花したものの、現時点まで満開になっていませんので、開花から満開まで47日以上かかっていることになります。

 平成5年(1993年)に43日という記録はありますが、珍しいほど長い記録です。ひょっとしたら、満開の基準を満たさずに桜が終わるかもしれません。

ソメイヨシノの開花が早いのは

 ヒカンサクラは満開がほぼ過ぎていますが、ソメイヨシノの開花はこれからです。

 このため、各気象会社が発表する桜情報に注目が集まっています。

 各気象会社の桜開花予想は、対象とする桜の木が違うなどで単純には比較ができませんが、各社とも、全国的に平年より早い開花となっています。

 例えば、ウェザーマップ社の予想では、福岡では3月17日、東京では3月23日などと、平年より早い予想です(図1、図2)。

図1 桜の開花予想(ウェザーマップによる)
図1 桜の開花予想(ウェザーマップによる)
図2 桜開花日の平年値(気象庁による)
図2 桜開花日の平年値(気象庁による)

 ただ、平年より早いといっても、記録的に早かった昨年、平成30年(2018年)よりは遅い開花予想です。

 これは、桜の木が、休眠打破と呼ばれる桜の開花を促進させるスイッチが入っていないと考えられるからです。

 桜の木は、強い寒気にさらされた後に暖気にあうと、急いで花を咲かそうとするスイッチが入り、結果的に、強い寒気にさらされていないときよりも早く咲きます。

 今冬は、西日本を中心に暖冬ですので、西日本は休眠打破が起きていない可能性が高く、東日本も寒暖差が大きく寒い日があったものの、休眠打破が起きているかどうか微妙です。

 今週以降は、低気圧と高気圧が交互に通過し、南から暖気が入ります。ときどき寒気が南下して気温が下がっても、平年並みです(図3)。

図3 札幌・東京・福岡の2月の気温の推移(2月22日から28日は気象庁の予報、3月1日以降はウェザーマップの予報)
図3 札幌・東京・福岡の2月の気温の推移(2月22日から28日は気象庁の予報、3月1日以降はウェザーマップの予報)

 このように、これから暖かい日が続きますので、桜は早い開花に向かって進みますが、加速スイッチが入っているかどうかによって、どのくらい早いかに差がでてきます。

 これが開花予報の難しさです。

桜の見頃は

 桜の見頃は、満開の前後ですが、天気や曜日を考えると、選択肢はそれほど多くありません(図4)。

図4 福岡と東京の桜の見ごろ
図4 福岡と東京の桜の見ごろ

 桜の開花予想でおおよその花見の検討をし、桜が開花したら、満開予想と天気予報で具体的な花見の計画を確定するというのがおすすめです。今年は、見事な満開の桜を堪能していただければと思います。

 ただ、気分によって花見に出かけ、「もう少し後なら見頃だった」「春雨に濡れちゃった」などというのも花見です。

 桜は毎年咲きますが、その年の花見は、その年だけのものです。

 「年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず(劉希夷)」です。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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