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春を告げる低気圧 寒さの心配から雨の心配に

饒村曜気象予報士
住宅の塀を濡らす雨(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

変わってきた天気図

 北日本を中心に西高東低の冬型の気圧配置となって寒気が南下することが多かった今年の冬も、そろそろ終わりです。

 天気図は、低気圧と高気圧が交互に通過する春の天気図に変わりそうです(図1)。

図1 予想天気図(2月19日9時の予想)
図1 予想天気図(2月19日9時の予想)

 低気圧は、南から暖湿気を持ち込みますので、低気圧が通過するたびに暖かくなり、春本番となります。

 低気圧は、南から暖気を持ち込みますので、広い範囲で雨が降ります。

 2月19日に東シナ海に進んできた低気圧も、広い範囲で雨雲を伴っています(図2)。

図2 雨雲の分布(2月19日9時の予想)
図2 雨雲の分布(2月19日9時の予想)

 そして、寒冷前線上では積乱雲が発達し、強い雨が降る可能性があります。

 地震の爪痕が残っている地方では、特に雨に警戒が必要な季節となってきました。

大地震の後遺症

 大地震が発生すると、地面に亀裂が入るなど、しばらくは土砂災害が発生しやすくなります。

 地震発生直後は、マスコミ等で地震による二次災害の懸念が言われることもあり、住民も土砂災害に気をつけますが、1年たち、2年たつと警戒が薄れがちになります。

 土砂災害の危険性も、大地震から時間が経過すれば小さくなりますが、その小さくなるスピード以上の早さで、人間の警戒心が低下しますので、大地震発生の1~2年後が一番危険と言われます。

 平成28年(2016年)4月14日に熊本県で震度7、同年4月16日に熊本県で震度7を観測し、大きな地震被害が発生してから、まだ3年しかたっていません。

 今年、平成31年(2019年)も、1月3日に熊本県和水町で震度6弱の地震が発生しています。

 このため、熊本地方気象台では、平成31年(2019年)1月3日の熊本地方の地震と平成28年(2016年)熊本地震の影響を考慮し一部市町村では、大雨、洪水の警報・注意報について通常基準より引き下げた暫定基準で運用しています。

 気象庁が暫定基準をいまだに継続しているのは、大地震の後遺症がまだ残っていると判断しているからです。

 熊本県には、この原稿を書いている時点で注警報は発表されていませんが、2月19日は警報級の大雨が降る可能性が「中」という情報を発表しています(図3)。

図3 熊本地方の警報級の可能性
図3 熊本地方の警報級の可能性

 熊本県の時系列を見ると、午前中を中心としてまとまった雨となる見込みですので、気象情報に十分注意してください(図4)。

図4 熊本の時系列予報
図4 熊本の時系列予報

 熊本地震だけでなく、大地震の影響は長く続きます。

 大地震による注警報の暫定基準が残っている市町村があるのは、熊本県だけでなく、全国12道府県もあります(表)。

表 注警報の基準を引き下げている市町村が1つでもある道府県
表 注警報の基準を引き下げている市町村が1つでもある道府県

 大地震から時間が経過するにつれて、引下げ幅を小さくしたり、通常基準に戻したりしていますが、それでもこれだけ残っているのです。

東京も本格的な雨

 東京の冬は、東海沖に発生する小さな低気圧などに伴う雲がときどき入ってくるため、雲が多く、ときおり雪や雨が降ることがあっても量は少なく、乾燥した日が続いていました。

 2月19日午後から降る雨は、久しぶりのまとまった雨となりそうです(図5)。

図5 東京の時系列予報
図5 東京の時系列予報

 そして、2月19日の低気圧は、西日本と東日本に春を告げる低気圧になりそうです。

図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

図2、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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