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北極の寒気がアメリカと日本に南下

饒村曜気象予報士
樹氷(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

北極点の強い寒気

 冬季、北極点上空は太陽が全く当たらないことから、「極渦」と呼ばれる非常に冷たい渦ができます。

 この極渦が2つに分裂し、一つはカナダ東部からアメリカ東部に、もう一つはシベリアのバイカル湖付近に南下しています(図1)。

図1 北半球上空約5500メートルの気温(図中、氷点下48度の領域が寒気の中心)
図1 北半球上空約5500メートルの気温(図中、氷点下48度の領域が寒気の中心)

 2ヶ所に寒気が南下する「2波数型」と呼ばれる形になっており、3ヶ所に寒気が南下する「3波数型」と同様に、同じような状況が続いて異常気象になりやすい形です。

 このうち、カナダ東部からアメリカ東部に南下した寒気の塊の影響で、シカゴで氷点下35度(日本時間30日21時)を観測するなど、北アメリカ東部では、「南極より寒い」と称される程記録的な寒さとなり、水量豊かなナイアガラの滝の一部が凍結するなど、大きな影響がでています。

 一方、バイカル湖付近に南下した寒気の本体は、それ以上は南下せず、その一部が周期的に周辺部に流出しています。

 このため、強い寒気が南下する北日本は寒冬気味ですが、この強い寒気が大きく南下することが少ないため、西日本は暖冬気味です。

 東日本は寒暖差が大きいものの平均すると並冬です。

寒気が大きく南下しないときは南岸低気圧

 今週後半は、2月1日の札幌市の最高気温予想が氷点下6度となるなど、強い寒気が南下してきますが、強い寒気は北日本止まりです(図2)。

図2 札幌の1月から2月初旬の気温の推移
図2 札幌の1月から2月初旬の気温の推移

 寒気が大きく南下した場合は、本州の南海上で低気圧は発生しませんが、週後半のように、寒気の南下が弱いと本州南岸から沖合で低気圧や前線が発生し、東海から関東の沿岸部を中心に雨や雪となります。

 南岸低気圧によって降る雪は、寒気が比較的弱いときに降ることから、「春を告げる雪」と呼ばれます。

 現在、東シナ海に停滞前線が発生していますが、この前線が次第に東へ延び、前線上で低気圧が発生する見込みです(図3)。

図3 上空約5500メートルの気温と地上天気図(1月30日21時)
図3 上空約5500メートルの気温と地上天気図(1月30日21時)

 このため、1月31日(木)は、東日本から西日本の太平洋側を中心に雨か雪のところが多くなります。

雨か雪かの判別

 普段、雪の少ない太平洋側の地方では、少しでも雪が降ると交通機関が大混乱し、大きな影響がでます。

 このため、雨か雪かの判別は、気象予報士にとって重要な予報です。

 現在のところ、西日本から東海地方の南岸までは雨として降りますが、関東南岸では夜に入って気温が低くなることもあり、雪として降る予報です(図4)。

図4 関東南部の雪(1月31日22時)
図4 関東南部の雪(1月31日22時)

 低気圧や前線が関東地方の南海上を離れて通過するため、雪になったとしても、雪の量は多くない見込みですが、そのあとに寒気が入ってきますので、地面に溜まった雨や雪が凍結する恐れもあります。

 関東地方では、1月31日の夕方から2月1日の朝にかけての雨や雪の降り方や気温について、最新の気象情報の入手に努めてください。

図1、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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