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センター試験 二日目は広い範囲で雨や雪、過去には気象キャスターの問題が出たことも

饒村曜気象予報士
鉢巻(ペイレスイメージズ/アフロ)

平成最後の大学入試センター試験

 平成最後の大学入試センター試験が、1月19日(土)と20日(日)に行われます。

 天気予報によると、冬型の気圧配置がゆるみ、天気は西日本から崩れてくる予報です(図1、図2)。

図1 センター試験初日(1月19日)の天気予報
図1 センター試験初日(1月19日)の天気予報
図2 センター試験2日目(1月20日)の天気予報
図2 センター試験2日目(1月20日)の天気予報

 最新の天気予報を確認し、余裕をもって試験会場入りをし、十分に実力を発揮して欲しいと思います。

(注)図2は、1月20日5時に新しいものに差し替えました。

気象キャスターが試験問題に

 平成17年(2005年)1月15日に行われた大学入試センター試験では、気象キャスターについての問題が出題されています。

 気象に関係していることから地学等の理科の科目のように思うかもしれませんが、英語の試験です。

図3 あるテレビ局で用いている天気を表す記号
図3 あるテレビ局で用いている天気を表す記号

 長文の英語をよみ、あるテレビ放送局が用いている天気を表す記号を考え(図3)、気象キャスターが出演しているテレビ画面を選ぶという問題に続きます(図4)。

図4 気象キャスターの出演場面を選ぶ選択枝
図4 気象キャスターの出演場面を選ぶ選択枝

 ジョーンズタウンの南にアクセルロット湖、北西にブルーヒルズ山地、北東にペイトン市があり、ペイトン市で雨が降っているという説明から、答えは(5)となります。

図5 寒冷前線の動き
図5 寒冷前線の動き

 そして、寒冷前線は南ほど早く南西進してアクセルロット湖を通過した後、ジョーンズタウンに達するという設定で次の問題に続いています(図5)。

出題者の真意は?

 日本付近では、大陸から日本に向かって寒気が南下してきますので、寒冷前線の動きはほとんどが北東進です。このため、英文を十分理解しないで、日本付近の寒冷前線の感覚で問題を解くと間違えます。

 この問題は、英語を十分理解しているかどうかを試すと同時に、北アメリカ大陸中央部では珍しくない現象を紹介している問題です。

 北アメリカ大陸中央部は、西にロッキー山脈が南北に延びていますので、高緯度地方からの寒気が南東進しにくく、迂回して北西進してくることも多いからです。

 センター試験の出題者がどのように考えていたかは知る由もありませんが、優れた問題と思いました。

太平洋側が雪で始まった試験

 「大学入試センター試験」が始まったのは、平成2年(1990年)からですが、その前身の「共通一次試験」が始まったのは、昭和54年(1979年)です。

 日本の南岸を低気圧が通り、太平洋側で雪が降った昭和54年(1979年)1月13日、日本の教育に大きな影響を与えた「共通一次試験」が始まりました。

 全国225会場一斉に行われた試験に34万人が挑戦しましたが、大学入試センターでは大雪などで 試験実施不能の会場がでることに神経をとがらせ、68人の職員の半数が泊まり込んでいます。青森では大雪注意報が発表となり、関東から山梨、長野も雪景色で、東京は小雪がちらつく天気でしたが、交通機関への大きな影響はなく、試験関係者の努力によって、雪の影響もなく順調に試験が行われました。

 ただ、東京都の本郷にある東京大学のキャンパスでは、東京都内の受験生の約3分の1にあたる1万6千人が受験しましたが、校舎の配置が複雑で、受験生が試験場探しに手間取ったため、東京大学の試験会場だけ試験開始を20分遅らせています。

2月の試験は適切か

 4月に入学となると、1~2月に入学試験となりますが、この頃は、一年で一番寒い時期です。

 しかも、天気は、全国各地で大きく異なることが多い季節です。

 全国一斉の試験ですので、受験生が天気によって大きな不利にとなる地方がでないよう、試験に関係する多くの人が、当日の天気予報をもとに対策をとっていますが、毎年のように悪天の中で試験が行われた地方があったというニュースが流れます(図6)。

図6 試験のイラスト
図6 試験のイラスト

 仮に、大学入学が10月となり、全国一斉試験が8月となった場合、暑さ対策が必要ですが、多くの年は冬ほどの地域差がでません。ただ、台風がやってくる年があり、その場合は、深刻な影響がでる可能性があります。

 1月試験の場合は難しい年が多く、8月試験の場合は易しい年が多くても、極端に難しい年が混じっているという、どちらにしても、試験関係者は大変です。

 試験の規模が全く違いますが、気象予報士試験は、毎年1月と8月に、全国6ヶ所(北海道、宮城県、東京都、大阪府、福岡県、沖縄県)で一斉に行われます。

 過去に気象が原因で中止となったのは、38回(平成24年8月)の沖縄県の1回だけで、1月の中止はありません。

 38回の気象予報士試験は、大型で非常に強い台風15号が沖縄県に接近したための、沖縄県だけの中止で、沖縄県の受験生に対しては、後日、全く違った問題を使って再試験が行われました。できるだけ他の会場の受験生と差がでないような配慮がされたのですが、このことによって、有利・不利が全く生じなかったと言い切れないと思いました。

 その気象予報士試験は、大学入試センター試験の一週間後、1月27日(日)に行われます。

 気象キャスターを目指す人の最初の関門です。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3、図4、図5の出典:センター試験問題をもとに著者作成。

図6の出典:饒村曜(平成10年(1998年))、天気のしくみ、新星出版社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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