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難しい台風24号加速のタイミング

饒村曜気象予報士
台風24号の雲と地上天気図(9月27日9時)

台風の加速

 沖縄の南海上には、大型で非常に強い台風24号があって北上中です。

 台風を動かす上空の風が弱く、地球自転の影響を受けて自力でゆっくり北上していますが、台風24号が上空に強い西風が吹いている緯度まで北上すると、進行方向が東よりに変わり加速します。

 台風が加速するタイミングの予報は、難しい予報のひとつですが、加速した先には、西日本のみならず、東日本、北日本が入ります。つまり、これから台風が最接近する沖縄地方も含めて、日本全国が影響を受ける台風です。

 気象庁の発表した台風予報では、加速タイミングの難しさを反映して大きな予報円となっています。

図1 台風の進路予報(9月27日9時発表)
図1 台風の進路予報(9月27日9時発表)

 台風情報は、常に最新のものをお使いください。

予報円を予報楕円に

 台風の進路予報について、予報誤差には,進行方向と進行速度の2種類がありますが、多くの例で調査すると,両方の誤差がほぼ等しく、予報位置を中心とした分布となっています。

 精度の良い予報になればなるほど予報位置の回りに集中した分布となり、精度の悪い予報ほど周辺部にも広がっている分布となりますので、予報の精度を簡単に表すには,この予報位置のまわりにどれ位集中してくるかということを示せば良いのです。

 様々な方法がありますが、一定の割合が含まれる円の大小で表わす方法が予報円での表示です。予報円では、70%が入る円の大きさです。このため、予報円の半径は、ほぼ台風の進路予報誤差の平均に対応しています。

 予報円を作ったころ、ほぼ等しいといっても、進行方向と進行速度の2種類の誤差があるなら、それぞれの誤差に対応した図形、つまり楕円を採用したほうが良いとの意見もありました。

 しかし、表示の簡明さ、情報伝達のわかりやすさ等を考え合わせ、円で表示することとなり、予報円が広く定着しています。

 ただ、進行方向の誤差と進行速度の誤差があるのは事実です。

 特に、台風24号の場合、上空の強い西風に乗って北東進するという予報は数値予報などの資料が安定して予想していますので、比較的精度が高いと考えられますので、誤差幅が小さいと考えられます。これに対し、加速するタイミングの予報は難しいので、誤差幅が大きいと考えられます。

 つまり、台風24号の場合は、進路に沿って長細い楕円形で表示したほうが正確なのかもしれません。

 台風24号が接近する沖縄地方や西日本では厳重な警戒が必要です(図2、図3、図4)が、そのほかの地方も他人事ではありません。

図2 沖縄本島南部が暴風に入る確率
図2 沖縄本島南部が暴風に入る確率
図3 鹿児島県奄美地方北部が暴風に入る確率
図3 鹿児島県奄美地方北部が暴風に入る確率
図4 台風24号の強度予報
図4 台風24号の強度予報

 台風24号の接近・上陸の時間に関しては、最新の予報によって大きく異なることがありますので、常に最新の情報入手に努め、警戒してください。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図2、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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