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西日本へ向かう台風19号と後続の台風20号

饒村曜気象予報士
西日本をうかがう台風19号と後続の台風20号(右下)(8月19日9時)

盛夏期の台風の発生の多い年

 日本の南海上には発達した台風19号があります。台風を動かす上空の風が弱いために進路が定まっていないために大きな予報円ですが、週明けには西日本へ向かっています(図1)。

図1 台風19号の進路予報(8月19日9時)
図1 台風19号の進路予報(8月19日9時)

 台風19号の情報は最新のものをお使いください

 そんな中、グアム島のあるマリアナ諸島の東海上で台風20号が発生しました。8月に入って8個目、7月・8月の盛夏期では13個目の発生です。

 台風の平年値は、8月は5.9個、1月から8月までの合計は13.6個ですので、今年、平成30年(2018年)の台風発生数は、かなりのハイペースということができます

 台風の統計を開始した昭和26年(1951年)以降の記録によると、8月の最多発生は昭和41年(1966年)と昭和35年(1960年)の10個、7月・8月の盛夏期の最多発生は平成6年(1994年)と昭和42年(1967年)の14個ですが、これに迫る多さです。

 平成6年(1994年)と昭和42年(1967年)は、今年と同じく、ともに記録的な猛暑の年です。

 太平洋高気圧の位置が平年より北に位置し、日本付近が太平洋高気圧に覆われるようになると、日本列島は猛暑となりますが、日本のはるか南海上は気圧が低くなって台風が発生しやすくなります。

 台風は水蒸気が水滴に変わるときに放出される熱(潜熱)をエネルギー源として発達しますので、海面水温が高い熱帯の海上で発生します。

 ただ、台風が発達するためには、多量の水蒸気を集めて効率的に潜熱を取り出す必要があり、このためには台風が渦を巻く必要があります。台風の渦は地球の自転の影響で発生しますので、地球の自転の影響が大きい高緯度ほどできやすくなります。

 このため、一般的に、夏になって緯度が高い海域でも海面水温が高くなると、低緯度以上に台風が発生しやすくなります。

 これに、台風の周囲の風の場も台風発生に影響しています。

 今年、平成30年(2018年)は、これらの条件が加わって、緯度がやや高い海域で台風の発生が相次いでいます。

台風の進路を決める太平洋高気圧

 夏の台風は、日本上空の風の場が弱いので、動きは遅く、時には迷走します。

 夏の台風の動きは、太平洋高気圧の動向に左右されます。太平洋高気圧は周期的に強弱を繰り返しており、強まったタイミングで台風が北上すると西日本へ向かいますし、弱まったタイミングなら東日本です。

 現在、太平洋高気圧が弱まったものの北からの移動性高気圧と一緒になって一時的に勢力を増しています。このため、日本の南海上の台風は太平洋高気圧の南側を北西進しています。

 中国大陸に上陸して熱帯低気圧に変わった台風18号、日本の南海上にある台風19号、そして発生したばかりの台風20号は、いずれも北西進しています(図2)。

図2 台風18号、19号、20号の進路
図2 台風18号、19号、20号の進路

台風20号の行方は

 台風19号は、今の所、西日本に向かう可能性が高いのですが、台風20号が北上してくる頃は、太平洋高気圧が弱まるタイミングです。

 このため、台風20号は、台風19号より早い段階で北上しそうです(図3)。東日本に影響するかもしれません。

図3 台風20号の進路予報(8月19日9時)
図3 台風20号の進路予報(8月19日9時)

 台風20号の情報は最新のものをお使いください

 来週は、前半は台風19号、後半は台風20号に警戒が必要な一週間です。そして、台風の動きに影響を与えるのは太平洋高気圧の盛衰です。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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