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大気が安定しない平成30年の「梅雨明け十日」

饒村曜気象予報士
気象衛星画像と地上天気図(7月10日21時)

平成30年の梅雨明け

 平成30年の梅雨明けは、沖縄地方で6月23日、鹿児島県奄美地方で6月26日、関東甲信地方で6月29日でした。

 関東甲信地方の梅雨明けは異常に早く、統計をとりはじめた昭和26年(1951年)以降、初めての6月の梅雨明けでした。

 これは、太平洋高気圧の張り出しが関東甲信地方までであったためです。その後、太平洋高気圧が後退して関東甲信地方は戻り梅雨となっていますが、東海や近畿地方などの梅雨明けとともに、関東甲信地方の戻り梅雨が明けたのは、「平成30年7月豪雨」という梅雨末期豪雨が終わった7月9日のことです(表1)。

表1 平成30年(2018年)の梅雨明け
表1 平成30年(2018年)の梅雨明け

 例年であれば、多くの地方の梅雨が明けた7月9日以降の10日間は、大気が安定して晴れて暑い日が続くことになりますが、今年は違っています。

梅雨明け十日

 梅雨明け後の10日間は大気が安定し、夏の暑い晴天が続くことが多いことから、「梅雨明け十日」という言葉が残っています。

 太平洋高気圧は、約10日の周期で、強くなったり、弱くなったりするが、特に梅雨が明けた直後は勢力が強く、「梅雨明け十日」といって、安定した晴天が続く。

 また、勢力が弱まったときには、北から前線が南下して各地に大雨を降らせることもあるが、時には雨が続き、気温も下がって戻り梅雨になる時もある。

出典:日本放送協会編(昭和61年)、NHK最新気象用語ハンドブック、日本放送出版協会。

 しかし、平成30年(2018年)の実質的な梅雨明けとなった7月9日以降、大気が不安定な状態が続き、狭い範囲ですが、所々で強い雨が降っており、7月10日には記録的な短時間大雨情報を発表するような大雨を観測しています(表2)。

表2 記録的短時間大雨情報
表2 記録的短時間大雨情報

 大気が不安定となって雷雨となる確率は、11日の昼過ぎから夕方にかけて、東日本から西日本の広い範囲で高くなります(図1)。

図1 発雷確率(7月11日15時~18時の確率)
図1 発雷確率(7月11日15時~18時の確率)

 このことは、雷が発生するような発達した積乱雲ができる可能性が高いことを示しており、同時に、局地的に強い雨が降る可能性が高いことを示しています。

 今年の太平洋高気圧は例年とは違います。梅雨明けしても「梅雨明け十日」の晴天はなさそうです。

 発雷確率は、12日も13日も昼過ぎから夕方にかけて、広い範囲で高くなります。

 また、最高気温が35度以上になる猛暑日ののべ日数は、最近の7年間では平成25年(2013年)に次ぐ、2番目の速さで増えています。

図2 年ごとの累計「猛暑日」日数
図2 年ごとの累計「猛暑日」日数

 暑さに体が慣れていないうちの暑さですので、睡眠を十分にとったり、まめに水分を補給するなど、体調の維持につとめて欲しいとおもいます。

 「平成30年7月豪雨」の被災地では、暑さによる熱中症と、局地的に降る強雨と落雷に注意し、二次災害を未然に防いで欲しいと思います。

  

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、表2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

表1の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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