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記録的な大雨のおそれ 昭和49年には小豆島で土石流

饒村曜気象予報士
小豆島福田港(ペイレスイメージズ/アフロ)

雨の少ない小豆島の土石流

 瀬戸内海に浮かぶ香川県・小豆島は、日本の中では雨の少ない地方の一つで、オリーブ栽培に適しています。

 しかし、昭和49年(1974年)の梅雨末期、7月6日~8日のように、時には記録的大雨が降り、大きな土石流被害が発生することがあります。

図1 地上天気図(昭和49年7月6日9時)
図1 地上天気図(昭和49年7月6日9時)

 このときは、東シナ海を北上していた台風8号によって梅雨前線の活動が活発になり、四国から関東地方南部にかけて大雨となって、静岡では24時間雨量が500ミリを超えています(図1)。

 このため各地で被害が発生していますが、特に、小豆島一帯では7月6日夜半から降り出した集中豪雨による土石流などで、死者29名、重軽傷者21名など大きな被害がでています。

土石流災害を防げ

 土石流とは、山腹、川底の石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流されるものをいいます。その流れの速さは規模によって異なりますが、時速20~40キロという速度で、一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させてしまいます。

 昭和49年(1974年)の小豆島における土石流以後も、各地で土石流が発生しているため、砂防ダムの設置などハード対策があり精力的に進められています。しかし、費用と時間がかかるために危険箇所について、全てについて対策が行われているわけではありません。

 そこで、ハード対策を補う手段としてソフト対策による警戒避難体制の整備が行われています。

 市町村から避難指示や避難勧告がだされた場合、速やかに安全な場所に移動することが大事です。その移動も安全第一です。

記録的な大雨に

 現在、本州を横断している前線の活発化は週末まで続き、広い範囲で警戒です。

 本州を横断している前線が活発化し、九州から東北南部まで広い範囲で強い雨が降っています。この状況は、8日(日)まで続きますので、記録的な大雨となるおそれがあり、土砂災害や河川の氾濫に、厳重な警戒が必要です(図2)。

図2 各地の大雨警報級の可能性(静岡、大阪、熊本の場合)
図2 各地の大雨警報級の可能性(静岡、大阪、熊本の場合)

 6月18日(月)の地震で大きな被害が発生した大阪府、あるいは、2年前の地震で大きな被害が発生した熊本県、1年前の豪雨で大きな被害が発生した福岡・大分両県等では6日(金)の夜から7日(土)に雨が強まる予報となっています(図3)。深夜の避難は危険ですので、早めに避難行動をしてください。

図3 計算機による1時間雨量予測(7月7日0時の予想)
図3 計算機による1時間雨量予測(7月7日0時の予想)

沖縄では週明けに台風号

 沖縄地方は、7日(土)では大雨警報を発表する可能性が「高」となっており、警戒が必要ですが、10日(火)には、暴風警報と波浪警報を発表する可能性が「中」となっています(図4)。

図4 沖縄本島中南部の警報級の可能性
図4 沖縄本島中南部の警報級の可能性

 かなり先の話であり、予報精度の関係から「中」にとどまっていると思いますが、これは、マリアナ近海にあって、発達しながら北西に進んでいる台風8号によるものです(図5)。

図5 台風8号の進路予報
図5 台風8号の進路予報

 台風8号は発達を続けながら、来週のはじめに沖縄に接近する可能性があります。

 ただ、台風の動きは再び強まると予想されている太平洋高気圧の動向に左右されます。太平洋高気圧がより強まれば、台風8号はあまり北上しないで、沖縄近海から中国大陸に向かいますし、強まる程度が弱ければ、東シナ海を北上して西日本に接近、西日本等にさらなる豪雨をもたらすことになります。

 気象庁と大阪管区気象台では、7月5日午後2時に特別に記者会見を行っています。

 それほど、危険な状況が続きますので、最新情報の入手に努め、警戒してください。

図1、図2、図4、図5の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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