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沖縄県で記録的短時間大雨情報 週明けは東日本でも大雨

饒村曜気象予報士
雨の中の新幹線(ペイレスイメージズ/アフロ)

今年初の記録的短時間大雨情報

 台風6号の通過で、今年初めて記録的短時間大雨情報「沖縄県伊江村付近で約110ミリ」が発表となりました(図1、表)。

図1 気象衛星ひまわりの赤外画像と地上天気図(6月16日9時)
図1 気象衛星ひまわりの赤外画像と地上天気図(6月16日9時)
表 記録的短時間大雨情報
表 記録的短時間大雨情報

 記録的短時間大雨情報は、7ヶ月前に鹿児島県十島村付近で観測以来ですが、多くは解析雨量による発表です。

 雨量計は正確な雨量を観測しますが、雨量計による観測は面的には隙間があります。一方、レーダーでは、雨粒から返ってくる電波の強さにより、面的に隙間のない雨量が推定できますが、雨量計の観測に比べると精度が落ちます。そこで、両者の長所を生かし、レーダーによる観測をアメダス等の雨量計による観測で補正すると、面的に隙間のない正確な雨量分布が得られます。これが解析雨量です。

 現在使われている解析雨量は、国土交通省水管理・国土保全局、道路局と気象庁が全国に設置しているレーダー、アメダス等の地上の雨量計を組み合わせて、降水量分布を解析したもので、雨量計の観測網にかからないような局所的な強雨も把握することができます。

 記録的短時間大雨情報でも使われますが、実測の場合と違って、雨量は「約110ミリ」のように、約がつき、10ミリきざみです(約120ミリより大きな値のときは「120ミリ以上」を使います)。また、「伊江村付近」のように、地点名に付近がつきます。

 これに対し、実測の場合は、「山梨県大月市賑岡町で104ミリ」のように、地点名も、観測した数値もそのまま使います。ただ、実測を使う場合は、それほど多くはありません。実際に強い雨を観測して発表する前に、解析雨量を用いて発表となるからです。

台風6号の温帯低気圧化

 台風6号は、温帯低気圧に変わりながら、本州の南岸を北東進する見込みで、週明けの月曜と火曜は東日本の太平洋側から近畿地方南部にかけて強い雨雲が北上してきますので、大雨に注意が必要です(図2、図3)。

図2 月曜日の朝の雨量予測
図2 月曜日の朝の雨量予測
図3 神奈川県東部の警報級の可能性
図3 神奈川県東部の警報級の可能性

 高級な魚である鯛は、腐っても価値があるということから、「腐っても鯛」という言葉がありますが、気象庁の予報現業では「腐ってもタイ(風)」といわれてきました

 台風の風が弱まって熱帯低気圧になっても、台風の構造が変わって低気圧になっても、多量の水蒸気を持ち込んでいますので、大雨による災害のおそれは継続するからです。

 台風6号は温帯低気圧に変わると言っても、大雨の危険性があり油断できません。

図1、図2、表の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページ。 

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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