西日本等で梅雨入りの気配 雨の観測は電子レンジと同じマイクロ波の電磁波で

収納棚(ペイレスイメージズ/アフロ)

西日本で梅雨の気配

 本州南岸を前線を伴った低気圧が通過したため、ほぼ全国的に久しぶりの雨となりました(図1)。

図1 地上天気図(5月23日21時)
図1 地上天気図(5月23日21時)

 その後、移動性高気圧に覆われますので晴れの所が多くなるのですが、この晴天は長続きせず、中国大陸には次の雨を降らせる前線が現れてきます(図2)。

図2 予想天気図(5月25日9時の予想)
図2 予想天気図(5月25日9時の予想)

 そして、来週は前線が本州付近に出現する可能性が高く、西日本や東日本では、雨や曇りの日が多くなります。週間天気予報によると、来週の鹿児島では雨の日が多くなっています。東京でも曇り主体の天気が続きます(図3)。

図3 鹿児島と東京の週間天気予報
図3 鹿児島と東京の週間天気予報

 現在、梅雨入りしてるのは、5月7日に梅雨入りした奄美地方と、翌8日に梅雨入りした沖縄地方だけですが、来週には九州南部など西日本で梅雨入りするかもしれません。

 九州南部の梅雨入りの平年は5月31日ですので、来週に九州南部が梅雨入りした場合、平年より早いということにはなりますが、格別に早いというわけではありません(表1)。

表1 平年の梅雨入り
表1 平年の梅雨入り

5月27日12時追記:鹿児島地方気象台は、27日に九州地方南部が梅雨入りしたと見られると発表しました。

 いずれにしても、九州南部の梅雨入りから約1週間後、6月上旬になれば、西日本各地で梅雨入りとなり、そのときに活躍するのは気象レーダーです。

 そこで気象レーダーについてまとめてみました。

==雨雲等を観測する気象レーダー== 

 レーダーは、レーダー発信機から電波を発射して、その電波がはね返ってくるまでの時間や方向から、物体の位置を知る装置のことです。このことを意味する英語の頭文字を並べた言葉(Radio detecting and ranging)からレーダー(Radar)と名付けられました。

 レーダーには電波を反射するものすべてが映りますので、目的以外のものが映らないようにする技術が大事です。

 反射してきた電波から、陸地や雨雲等によるものを自動的に消し、船舶や飛行機等からの反射電波のみを表示する探知用レーダーの技術は比較的早くに実用化されました。

 陸地は動きませんので、同じ場所に写っているものを消す技術で陸地が映らなくなります、雨雲からの反射は弱いので、感度を落とすという単純な技術でも雨雲が映らなくなります。

 しかし、陸地等を消し、雨雲のみを表示する気象レーダーの技術は非常に難しく、ようやく実用化されたのは昭和50年頃(1975年頃)になってからです。

 個人的な話ですが、気象庁に採用となり最初に配属されたのが函館気象レーダーで、ブラウン管に映るものの中から、雨雲によるものと思われるものをスケッチする作業をしていました。

 このため、雨雲のみを自動的に表示してくれる気象レーダーが登場したときは、スケッチする作業を知っているだけに、衝撃的でした。

 そのときに想像できなかったことは、このレーダーが、単なる雨雲のみを自動的に表示するだけではなかったこと、つまり、飛躍的に利用価値が高まったことです。

 雨雲のみを表示するということは、計算機処理で数値情報になっていることです。数値情報になっているため、電話回線によって多くの場所へ安価で送ることが可能になりました。

 そして、計算機を使ってより利用価値が高い情報として使われるようになりました。

レーダーの合成

 気象庁では全国20か所で、降水の強さ、鉛直方向の広がり等を立体的にレーダーで観測しています。20台ものレーダーを使っている理由は、地球が丸いためです。

 どんなにレーダーが進歩しても、その有効範囲は地球の曲率のために限度があります(図4)。

図4 レーダーの限界
図4 レーダーの限界

 つまり、遠くにある背の低い雲は、図4の(A)のように地平線の下に隠れて探知できません。図4の(B)のように、レーダーを高い場所に設置すれば多少遠くまで探知できますが、それでも限界があります。

 また、山の影になる方向もあるので、実際に1台のレーダーが観測できる範囲は、概ね200 ~400キロ先までです。このため、全国をカバーするためには少なくとも20台が必要ということです。

気象レーダーの補正

 気象レーダーは、地上の雨量を直接測定するものではなく、電波を使って広い範囲の雨の分布や強さを連続的、面的に観測するものです。このため、あくまで推定の値です。

 一方、雨量計はその地点の雨量を正確に観測できますが、アメダスであっても、約17キロ四方に1か所の配置で、点による観測です。

 そこで、各地の気象レーダーで観測した面的なデータを気象庁のアメダスや地方自治体などが持っている雨量計データでできる限り較正することにより得られる雨量情報が解析雨量です(図5)。

図5  解析雨量の原理
図5  解析雨量の原理

 このような日本の雨の解析、予報システムは、正確な雨量分布をすばやく表示することができ、世界的に見ても進んだシステムです。

 そして、解析雨量は、降水短時間予報や記録的短時間大雨情報等に使われるなど、防災情報では重要な役割をしています。

電子レンジと同じマイクロ波

 電磁波にはいろいろな波長のものがあます。

 テレビやラジオなどに使われている電波も電磁波ですし、光も電磁波ですが波長が異なっています(表2)。

表2 電磁波の波長
表2 電磁波の波長

 気象レーダーはマイクロ波の中でも波長が6センチの電磁波を使い、雨粒などから反射する電波の強さから雨の強さを観測しています。

 身近にある電子レンジもマイクロ波が使われていますが、電子レンジが使っているマイクロ波の波長は食品サイズである12センチです。というのは、一番効率よく食品に含まれている水分を振動させて加熱できる波長は、食品サイズと同じ波長であるからです。

 このため、同じマイクロ波といっても、気象レーダーが使っているマイクロ波のほうが波長が短くなっています。

 なお、富士山頂に昭和40年(1965年)から平成11年(1999年)まで設置されていた富士山気象レーダーは、遠くにある台風を捉える目的で、大気による減衰がより少ない波長を選んだため、10センチのマイクロ波を使っていました。

 当時は、巨大な電子レンジが富士山頂にあったことになります。

図1、図2、図3、表1の出典:気象庁ホームページ

図4、図5の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。

表2の出典:理科年表(丸善)をもとに著者作成。