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低温注意報は2日め、3日めと危険性が増す

饒村曜気象予報士
水道の蛇口を回す手元(ペイレスイメージズ/アフロ)

 「低温注意報」は、低温により災害が発生する場合に発表されるもので、昭和63年(1988年)3月31日までは「異常低温注意報」という名称でした。

 「異常低温」というほどではない低温でも災害が起きることなどを考慮したための変更です。

低温注意報は夏季と冬季で考え方が違う

 低温注意報は、低温により災害が発生するおそれがある場合に発表するといっても、夏季と冬季では考え方が違います。

 夏季は低温のため農作物などに著しい被害が発生するときに発表となりますので、発表の目安は主として平均気温になります。

 冬季は低温によって水道管凍結や破裂による著しい被害が発生するときに発表となりますので、発表の目安は主として最低気温になります。

表1 低温注意報の発表基準(気象庁ホームページをもとに作成)
表1 低温注意報の発表基準(気象庁ホームページをもとに作成)

 表1は、全国の主な地方の低温注意報の発表基準ですが、ほとんどの地方で夏季と冬季の2種類の基準がありますが、暖かい地方では、冬季のみの基準です(夏季は発表しません)。

各地で低温注意報

 日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となり、非常に強い寒気が南下中です。

 このため、東北地方や東日本、九州北部地方で低温注意報が発表となっています(図1)。

図1 低温注意報の発表状況(平成30年1月25日21時48分現在)
図1 低温注意報の発表状況(平成30年1月25日21時48分現在)

 東京では、1月24日に低温注意報が発表となりましたが、冬場の低温注意報として33年ぶりに発表となりました。   

 低温による水道管の凍結や破裂は、低温が長引けば長引くほど可能性が高まり、低温による被害が拡大する懸念があります。

 注意報が発表された直後は低温に対して注意するのですが、注意報が長期間にわたって発表されるときは、意外と油断しがちです。しかし、低温注意報については、発表日より2日め、2日めより3日めのほうが危険性が増しています。

 しばらくは、低温に対して注意の継続が必要です。

最低気温の記録は氷点下41.0度

 日本の最低気温の記録は、明治35年(1902年)1月25日に北海道の上川(現在の旭川)で観測した氷点下41.0度です。夜明け前には晴れて風が弱かったために地表からの赤外線放射がそのまま宇宙空間に放出されるという放射冷却がおきて地表面付近の温度がさがり、この冷たくなった空気が上川盆地にたまりました(図2)。

図2 明治35年(1902年)1月25日の地上天気図
図2 明治35年(1902年)1月25日の地上天気図

 なお、最低気温の記録、氷点下41.0度が観測される2日前の1月23日、青森歩兵第5連帯の210名が青森県・八甲田山での耐寒雪中行軍中に遭難し、凍死者が199名にも達するという事故がおきています。

 最低気温のランキングをみると、昭和53年に北海道上川の母子里(北海道大学演習林)で-41.2度を観測したものを含め、ほとんどが北海道の上川盆地で放射冷却がおきたときに観測されたもので、しかも、ほとんどが昔の記録です(表2)。

表2 最低気温の記録(参考は気象官署以外の観測)
表2 最低気温の記録(参考は気象官署以外の観測)

 これは、地球温暖化に加え、観測所周辺の都市化が進んで強い放射冷却が起きにくくなったためと考えられます。都市化によって人口熱が放出され、汚れた空気が雲の役割をするからです。

 近年、最低気温のランキングに入るような低温がでなくなっていますが、今回の寒気南下では、すでに、北海道の喜茂別町で氷点下31.3度を観測(1月25日)しています。

 南下した強い寒気に覆われているところに、放射冷却がおきれば、さらに低い最低気温を観測すると思います。

 

 注意報や警報などの入手に努め、厳重な警戒が必要な週末をむかえます。

図1の出展:気象庁ホームページ。

図2の出展:気象庁資料(中央気象台印刷天気図)。

表1、表2の出展:気象庁ホームページ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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