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日本は大雪でも平昌オリンピックは雪不足

饒村曜気象予報士
世界の国旗(写真:アフロ)

 北日本や北陸地方の上空約5000メートルには氷点下39度以下の強い寒気が流れ込み、日本付近は強い冬型の気圧配置となっています。そして、日本海をわたる季節風により日本海側を中心に大雪となっています。

 しかし、冬季オリンピック開催の韓国・平昌は、強い冬型の気圧配置となっても、季節風が陸上を通るため雪があまり降っていません。

最初からある雪不足の懸念

 韓国・平昌で開催される冬季オリンピック(平成30年(2018年)2月9日から2月25日まで開催予定)まで、2週間となりました。

 低緯度で冬季大会を開催する場合は、いつも雪不足の懸念がありますが、平昌はもともと雪の少ない地域です。

 日本では、西高東低の冬型の気圧配置になると、シベリアの非常に冷たい乾いた寒気が南下し、相対的に暖かい日本海を吹き渡って下層から熱と水蒸気の補給を受けて雪雲が発生・発達することから、日本海側の地方に大雪を降らせます(図1)。

図1 冬型の気圧配置と日本海側の大雪
図1 冬型の気圧配置と日本海側の大雪

 しかし、韓国では、西高東低の冬型の気圧配置になり、シベリアの冷たい乾いた寒気がほとんど陸上を通って南下してきます。このため、非常に寒くなるのですが雪はあまり降りません。

 シベリアの寒気は、地上天気図の等圧線にほぼ沿って南下してきます。日本を通っている等圧線は、日本海を通ってシベリア大陸にのびていますが、韓国を通っている等圧線は、ほぼ陸上を通ってシベリア大陸にのびています(図2)。

図2 予想天気図(平成30年1月25日9時の予想)
図2 予想天気図(平成30年1月25日9時の予想)

平昌でまとまった雪が降るのは

 平昌でまとまった雪が降るのは、低気圧が通過するときです。

 今シーズンの平昌は、平成29年(2017年)11月4日に初雪を観測し、11月26日に積雪16センチを観測しました。平昌でまとまった雪が降り、オリンピック予定会場が雪で白く染まったというニュースが流れましたが、このときは、朝鮮半島北部を通過した低気圧に伴う寒冷前線が通過したことによる雪です。

 また、平昌でオリンピック開催が決まる前、国際オリンピック委員会の視察団が平昌を訪れた平成23年(2011年)2月16日の記録的な大雪は、朝鮮半島南部を低気圧が通過したことで降りました。

長野オリンピックの時は32日前

 平成10年(1998年)の長野オリンピック大会のときは、開会の32日前の1月6日に、まとまった雪が降り、以後は雪の心配がなくなっています。

 しかし、平昌オリンピック大会は、2週間前になっても、まとまった雪は降っておらず、また、西高東低の冬型の気圧配置がしばらく続く見込みです。雪不足に対して、スノーマシンの大量動員で雪を作るという報道がなされていますが、平昌オリンピック関係者は気が休まらない日が続くと思います。

追記(1月25日21時):

 気象衛星「ひまわり」は、強い寒気の南下に伴って日本海で発生した雪雲が日本海側の地方に流入し、大雪となっていることを示しています。しかし、朝鮮半島の上には雪雲はなく、朝鮮半島がはっきり見えています(図3)。

図3 気象衛星「ひまわり」の可視画像(平成30年(2018年)1月25日9時)
図3 気象衛星「ひまわり」の可視画像(平成30年(2018年)1月25日9時)

図1の出典:饒村曜(2014年)、天気と気象100、オーム社。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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