Yahoo!ニュース

5年前は南岸低気圧で大雪の成人式、今年は日本海低気圧で春一番のような大荒れの成人式 

饒村曜気象予報士
大雪の「成人の日」 首都圏で交通大混乱(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

南岸低気圧

 寒気の南下が弱まると、東シナ海から本州の南岸に前線が現れやすくなり、この前線上に低気圧が発生し、発達しながら北東に進みます。

 この低気圧は南岸低気圧と呼ばれ、太平洋沿岸では大雨や大雪、強風などに警戒が必要となりますが、対策が十分ではない太平洋側に大雪が降れば、交通機関は大混乱におちます。雨と雪とでは大違いですが、雨と雪の判別は難しい技術です。

 関東地方でいえば、低気圧が八丈島より北を通過する場合は、暖気が入って雨となりますが、八丈島の南を通過する場合は、降水をもたらす低気圧の雲の中心から離れることになりますので、寒気が入ってきますが雪の量としては少なく、大雪にはなりません。

 関東地方で大雪となる目安は、低気圧が八丈島付近を通過するときです。

平成25年(2013年)の大雪の成人式

 平成25年(2013年)の成人の日(1月14日)の関東地方は雪となり(横浜と東京では初雪)、都心部まで成人式の時間帯にかなりの積雪となりました。

 北から寒気の南下に加えて、南から熱帯低気圧に伴う暖かくて湿った空気の北上があり、低気圧は急発達しました(図1)。

図1 地上天気図(左:平成25年(2013年)1月14日9時、右:1月15日9時)
図1 地上天気図(左:平成25年(2013年)1月14日9時、右:1月15日9時)

 中心気圧が、24時間でおよそ20 hPa以上低くなる低気圧を爆弾低気圧ということがありますが、気象庁では戦争をイメージするなどの理由から使っていません。

 なお、1月15日の読売新聞も「爆弾低気圧と表記することがありましたが、今後は猛烈低気圧と表記します」という記事を載せています。

 晴れ着の新成人が、成人式が終わって外に出ると鉄道や地下鉄がとまり、高速道路の閉鎖、一般道路もスリップして動かない車が道を塞ぐなど大混乱でした。

日本海低気圧

 南岸低気圧のときよりも寒気の南下が弱まると、低気圧は本州の南岸ではなく、日本海を通過するようになります。

 春一番は、立春(今年は2月4日)以後、最初に日本海の発達した低気圧に向かって、おおむね風速が毎秒8メートル以上の強い風が吹き、暖気が入って気温が上昇することをいいます。

 今年の成人の日(1月8日)は、立春まで約1ヶ月ありますので、春一番ではありませんが、日本海の発達中の低気圧に向かって暖気が入り、春一番のような強い南よりの風が吹き、春を思わせる気温となります(図2)。

図2 専門家向け予想天気図(8日21時の予想、点線は上空約1500メートルの気温) 
図2 専門家向け予想天気図(8日21時の予想、点線は上空約1500メートルの気温) 

 また、北日本や北陸地方の多雪地帯では、雨が降って全層雪崩が発生しやすくなったり、融雪が進んで洪水(融雪洪水)となりますので注意が必要です。

 平成25年(2013年)は、南岸低気圧が通称「爆弾低気圧」となって大雪の成人式となりましたが、今年は、日本海低気圧が通称「爆弾低気圧」となって春一番もどきの成人式になりそうです。

三連休明けは寒気南下

 三連休明けは、オホーツク海南部で低気圧がさらに発達し、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置が強まり、強い寒気が南下します(図3)。

図3 専門家向け予想天気図(9日21時の予想、点線は上空約1500メートルの気温)
図3 専門家向け予想天気図(9日21時の予想、点線は上空約1500メートルの気温)

 このため、全国的に北よりの強い風が吹き、北日本と北陸地方は大雪に警戒が必要です。

 多雪地帯では春一番のような暖気が入って雪の表面が少し溶け、それが凍ったあとの大雪です。表層雪崩が起きやすくなっていますので、雪崩にも警戒が必要です。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事