雪不足が心配 緯度が低い韓国・平昌での冬季オリンピック

アルペンスキーをする男性(写真:アフロ)

 冬季オリンピックが、約2ヶ月後の、来年(2018年)2月9日(金)から韓国の平昌(ピョンチャン)で開催されます。

低い緯度での冬季オリンピック開催

 冬季オリンピックは、第23回の平昌まで、20都市で開催されています(3都市が2回開催)。

 開催都市を緯度別に見ると、一番高緯度開催は第17回大会のリレハンメル(ノルウェー)の北緯61度、一番低緯度開催は第18回大会の長野の北緯37度です(表)。

表 冬季オリンピック開催都市(高緯度3都市と低緯度6都市)
表 冬季オリンピック開催都市(高緯度3都市と低緯度6都市)

 平昌は、長野、米スコーバレーに次ぐ緯度が低い都市です。

 緯度が高い都市での冬のオリンピック開催であっても、地球温暖化の影響で、年によっては雪不足となります。まして、低緯度の都市での冬のオリンピック開催は、いつも雪不足の心配がつきまとい、雪不足対策が大変になります。

 例年のように雪が降ってくれれば問題がないのですが、雪の少ない年に開催となると、人工降雪機をフル稼働して氷の粒をばらまいたり、遠くの高山から雪を運んでこないと競技ができなくなるからです。

 しかも、これは、気温が低いという条件付きです。気温が高いと、人工降雪機で雪を作るそばから雪が溶けてゆき、ドライアイスと塩を混ぜるなどの対策も必要になってきます。

 

雪不足の冬季オリンピック

(1)長野大会(平成10年(1998年)2月7日開幕)

 冬季オリンピック史上、最も低緯度で行われた長野オリンピックは、雪不足ということはなかったものの、変わりやすい天気の中で行われました。長野オリンピック冬季競技大会組織委員会内には、オリンピック気象センターが設けられています。この気象センターは、24時間体制でオリンピックが円滑、かつ効果的に運営されるための全ての気象データを統括し、多岐にわたる気象情報が関係機関や関係者に提供されました。雪不足にはならなかったものの、八方尾根滑降競技場は雪や強風の連続で、1日3レースを行うなどして、競技日数が8日間から5日間となっています。

(2)ソルトレイクシティ大会(平成14年(2002年)2月8日開幕)

 アメリカのソルトレイクシティでは、平成14年(2002年)の年明けにまとまった降雪を記録してから曇天が続いていましたが、1月18日に本格的な降雪を記録しています。このため、雪不足をちょっぴり心配していた大会関係者をホッとさせています。

(3)トリノ大会(平成18年(2006年)2月10日開幕)

 イタリアのトリノでは、平成18年(2006年)1月は記録的な雪不足となり、アルペンスキーの会場のセストリエールでは、人工降雪機を1日に20時間稼働させて、30から40センチメートルの積雪量を保っていました。しかし、1月下旬から断続的に雪が降り続き、1月30日には、懸念された深刻な雪不足が解消されています。

(4)バンクーバー大会(平成22年(2010年)2月12日開幕)

 カナダのバンクーバーでは、平成21年(2009年)に行われたプレ大会では、降雨や軟雪で競技中止が相次いでいます。平成22年(2010年)1月のバンクーバーの気温は観測史上最高となっています。暖冬で降雪量が少なく、1月中旬に続いた雨で雪解けが進んでいます。

 暖冬は2月に入っても続き、2月4日の最高気温は13度にもなっています。モーグル会場のサイプレスマウンテンは雪不足で、練習場を、急遽片道2時間以上かかる北部のウィスラーに移しています。本番のオリンピックは、プレ大会のように競技中止はできません。人工降雪機の稼働ラインは氷点下2度ですので、ここまで下がらないときは、別の山で保有していた自然雪をヘリコプターやトラックで運んでいます。

アルペン延期続く

大会の華、アルペンスキーは、天候の影響でまだ始まっていない。最初の種目として13日に予定されていた男子滑降は、コースのゴール付近は気温の上昇や雨で、スタート付近は新雪で状態が悪化し15日に延期。14日の女子スーパー複合も18日に延びた。…天候による大幅な延期は、男子滑降が5日間も延びた1998年長野大会以来となる。

出典:平成22年2月15日の読売新聞

(5)ソチ大会(平成26年(2014年)2月7日開幕)

 ロシアのソチでは、平成26年(2014年)の早い時期から雪が降り、今後も降雪が見込まれることから、1月13日にロシア気象局が「冬季オリンピック期間中に雪不足の心配はない」との見解を示しています。しかし、2月に入ると温暖な天気が続き、雪不足が深刻となっています。前年のプレ大会が雪不足に悩まされ、中止となったり荒れて重くなった雪での競技となった二の舞を避けるため、フリースタイル競技が行われるロサ・クトール公園では人工降雪機が日中からフル稼働しています。そして、気温上昇で雪質が悪化した場合は、オリンピック時の雪不足に備え、昨冬から雪を断熱材で覆って貯蔵していた雪を運んできています。

平昌大会誘致の時は大雪

 韓国の平昌は、ドラマ「冬のソナタ」で名所となったドラゴンバレーなど韓国でも有数のスキー場が集まっています。平昌がオリンピック誘致のとき、国際オリンピック委員会の視察団が平昌を訪れた平成23年(2011年)2月16日は、直前に記録的な大雪が降っています。この豪雪の中、国際オリンピック委員会の視察団が訪問する競技場までの主要道路226キロメートルを、3日で除雪し、優秀な競技環境をアピールしています。

 しかし、開催が決まってからの近年は、雪が少なすぎる年が続いています。

 

2月までの予想

 気象庁が11月25日に発表した3ヶ月予報の参考図によると、12月から来年2月までの平均的な上空の偏西風は、フィリピン付近を中心に積乱雲の発生が多いために、大陸東部でやや北に、日本の東でやや南に蛇行する予想です。このため、北日本付近は低気圧の影響を受けやすく、シベリア高気圧は南東側でやや強まって、東日本以西には寒気がやや流れこみやすいとみられていますが、朝鮮半島には暖気が入りやすいことを示しています(図1)。

図1 気象庁が発表した海洋と大気の特徴(平成29年12月~平成30年2月)
図1 気象庁が発表した海洋と大気の特徴(平成29年12月~平成30年2月)

 地球全体で大気全体の温度が高く、地上から約1500メートルの天気図では、平昌上空では12月から来年2月まで3ヶ月の平均で氷点下6度となっています(図2)。

図2 地上から1500メートル上空の平均気温の予想(平成29年12月~平成30年2月)
図2 地上から1500メートル上空の平均気温の予想(平成29年12月~平成30年2月)

 平地で雨が降るか、雪が降るかの目安は、上空約1500メートルの気温が氷点下9度ですので、氷点下6度という温度では雨となります。平昌が500から600メートルの高地であることを加味して、ギリギリ雪となる温度です。

 平昌の今冬は、平年より暖かそうで、これまで以上に、雪不足対策が必要なオリンピック冬季大会になりそうです。

 

図1、図2の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:インターネット公開資料をもとに著者作成