3種類の逆転層 放射冷却による接地逆転層で今冬一番の寒さ
逆転層
対流圏では高度とともに気温が下がりますが、時には、気温が下がらない逆転層が出現します。逆転層には、前線性逆転層、沈降性逆転層、接地逆転層の3種類があります(図1)。
下層の冷たい空気の上に暖かい空気が滑昇すると前線性逆転層ができます。つまり、この場合は、逆転層の場所が上空の前線です。
また、高気圧の圏内などで上空の空気が下降すると、気圧が高くなることで圧縮され、気温が上昇して沈降性逆転層ができます。この場合は、逆転層より上では非常に乾燥していますので、逆転層より上でも湿っている前線性逆転層とは容易に区別できます。
これに対し、夜間の放射冷却によって地表に接する空気が冷やされて、その上にある空気より気温が下がる場合には接地逆転層ができます。
11月10日の朝は、移動性高気圧に覆われ、各地で放射冷却によって、接地逆転層ができ、今冬一番の寒さとなりました(図2、図3)。
放射冷却
曇っている場合の夜間は、気温は急激には下がりませんが、よく晴れていて、空気中の水蒸気が少ない場合は、地表面からの放射によって、地表面の気温が大きく下がることもあります。このような状態で気温が下がることを放射冷却と呼びます(図4)。
水は比熱容量が大きいため、水蒸気が多いと放射冷却が起こりにくく、風が強い場合には、たとえ放射冷却が起こっても上空の暖かい空気との混合が起きて放射冷却が弱くなります。 移動性高気圧に覆われた早朝は、放射冷却が起きやすい条件がそろいますので、朝の最低気温が低くなります。
ただ、太陽が昇ると、日射によって地表面が温められ、接地逆転層がなくなりますので、厳しい冷え込みは早朝だけです。
今冬一番の寒さをもたらした移動性高気圧の後ろには、発達中の低気圧があって、週末の北日本を襲います。11日(土)には北日本で暴風警報(暴風雪警報)が発表される可能性が高いので、気象情報には十分注意してください(図5)。
図1の出典:「饒村曜(2014年)、気象予報士完全合格教本(改訂3版)、新星出版社」に加筆。
図2、図5の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。
図4の出典:饒村曜(2014年)、天気と気象100、オーム社。