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台風が再び週末の日本へ

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」赤外画像(平成29年10月25日0時00分)

台風22号は「サオラー」

 総選挙投票日に日本列島を襲った台風21号の記憶が残る中、台風22号がマリアナ諸島で発生しました。台風の名前は「サオラー」です。

 台風にはアジア地域の14カ国・地域が提案した140個の名前のリストから発生順に名前がつけられていますが、台風22号には、ベトナムが用意した名前「サオラー」がつけられました。ウシ科の動物である「ベトナムレイヨウ」の意味です。

 台風22号は発達しながら北西進していますが、その後、向きを北に変え、週末には日本列島を襲う可能性があります(図1)。

図1 台風22号の進路予報(平成29年10月25日0時の予報)
図1 台風22号の進路予報(平成29年10月25日0時の予報)

台風21号の情報については、常に最新のものを入手して下さい。

 台風21号が、総選挙の投票日、10月22日(日)に秋雨前線を刺激して近畿地方を中心に全国的に大雨を降らせ、総選挙の翌日、23日(月)に静岡県御前崎に上陸しました。

 今週末も、台風22号が日本列島を襲う可能性があり、2週連続で台風に警戒です。

週末の台風22号

 気象庁が発表した台風の5日予報によると、10月29日(日)21時の予報円の中心は関東の南海上ですが、予報円には北海道南部から九州西部までが入っています。

 台風が発生したばかりで台風進路が定まらず、予報円が大きいためです。

 予報円が大きすぎて使えないという意見があるかと思いますが、予報円の大きさは、台風の進路予報誤差に対応しています。

 台風22号の予報円が大きいということは、それだけ台風22号の予報が難しいことを意味していますので、最新の台風情報の入手に努める必要があります。

平成になってから「10月以降の台風2個上陸」が増えた

 10月の台風は、日本列島に近づくにつれ大きく東に向きを変えることが多いのですが、希には、少し北上して上陸する台風もあります。

 台風21号は、その希な台風で、台風の統計資料が整備されている昭和26年(1951年)以降では、歴代3位の遅さで上陸しました(表1)。

表1 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)以降)
表1 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)以降)

 台風22号がもし上陸すると、10月に2個目の上陸となります。

 10月の台風上陸は平年0.2個(5年に1回)で、10月以降に2個の台風上陸となると、昭和26年(1951年)から昨年までの66年間で4回しかありません(表2)。

表2 台風が10月以降に2個上陸した年
表2 台風が10月以降に2個上陸した年

 ただ、気になるのは、4回のうち、3回は平成になってからです。

 理由はわかりませんが、近年は10月以降に複数の台風が上陸した年が増えています。

10月の大雨台風

 10月の台風は、伊勢湾台風のように猛烈に発達したまま日本列島に上陸し、北上するのではなく、猛烈に発達した台風でも、日本に接近すると台風の風は弱まってから上陸し、北東進します。日本近海の海面水温が低くなり始めていることから、豊富な水蒸気を集めることができないために台風としては勢力が衰えるからですが、気を抜くことはできません。

 日本付近に前線が停滞することが多く、台風によって大雨が降る可能性があるからです。

 [過去の10月の台風 過去の10月の台風]では、平成16年の台風23号は日本海側の円山川や由良川の堤防が決壊し、暴風と大雨で死者95 人と、昭和54年(1979年)の台風20 号以来の多くの死者となりました。

 また、平成25年(2013年)の台風26号でも、伊豆大島で大きな土石流が発生するなど、土砂災害や河川の氾濫などで49人が亡くなっています。

 そして、今年、平成29年(2017年)10月の台風21号も、紀伊半島を中心に大雨となって死者・行方不明者6人、浸水家屋1600棟など、大きな被害が発生したことは記憶に新しいところです。

 現在、日本列島はほぼ移動性高気圧に覆われ、前線が本州の南海上に下がっていますが、台風の北上とともに強化しながら北上し、「台風と前線」という危険な組み合わせになる可能性があります(図2)。

図2 予想天気図(平成29年10月26日9時の予想)
図2 予想天気図(平成29年10月26日9時の予想)

 今週も、先週に引き続き、台風の動向に注意が必要な一週間です。

図1、図2の出典:気象庁ホームページ。

表1、表2の出典:気象庁ホームページ、国立情報学研究所(デジタル台風)をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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