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西日本を中心に猛烈残暑

饒村曜気象予報士
汗を拭くビジネスマン(写真:アフロ)

暦より遅れる日本の季節

 現在、ほぼ全世界で使用されている暦は、太陽の動きに基づいた「太陽暦」ですが、江戸時代以前の日本では、月の運行に基づいた「太陰暦」でした。

 太陰暦は、月の形で日付がわかる等、大変便利なのですが、太陽の位置と無関係であるため、暦と季節との間にずれが生じてしまい、農耕等への活用には二十四節気が使われました(表1)。

表1 二十四節気
表1 二十四節気

 日本の季節は、暦の上の季節(二十四節気)よりも遅れて訪れます。

 これは、古代の中国・華北地方で、季節を知る目安として、太陽の運行をもとにした二十四節気(節気をさらに初候、次候、末候の3つに分けた七十二候)を使っていたものを、そのまま使ったことが原因であると言われています。

 二十四節気は、太陽の位置を示す太陽黄経の考えを活用し、0度を春分、90度を夏至等とし、これに季節の言葉をつけたものですが、中国大陸の季節は、海で囲まれた日本の季節より約1ヶ月進んでいます。

 このため、季節の言葉をそのまま使うとずれがでてくるのですが、このずれをそのままにしていることが日本人の知恵と思います。

 つまり、暦の季節を、様々な行動の準備に使おうと考えたのではないかと思います。

 例えば、立春は、春にはほど遠い寒い季節です。それを、日本人は「そろそろ春に向けて農作業の準備を始めよう」等と考えて利用し、白露は「寒さが来る前に収穫作業を始めよう」等と考えて利用したのです。

残暑と猛烈残暑

 立秋過ぎの暑さを「残暑」といいます。1年間を通しての平均気温は、立秋の前後が一番高く、最高気温が30℃以上という真夏日の約半分は立春後です(表2)。残暑の方が暑くなるということは、珍しいことではありません。

表2 平年の真夏日(1981年から2010年までの平均日)
表2 平年の真夏日(1981年から2010年までの平均日)

 東京では約50日、大阪では約70日も真夏日があり、近年は都市化の影響などで増加傾向にあります。

 秋が進むとともに日差しは弱まり、太平洋高気圧が勢力を弱める一方で、オホーツク海高気圧が勢力を強めてきます。朝晩には涼しくなって秋を感じる日もあれば、一時的に太平洋高気圧の勢力が増して残暑を厳しく感じる日もあります。このため、9月の残暑は「猛烈残暑」と呼ぶことがあります。

猛烈残暑の予報

 週間天気予報によると、西日本を中心に真夏日が続きます(表3、表中の二重丸は最高気温が25度以上の夏日)。

表3 週間天気予報からみた真夏日
表3 週間天気予報からみた真夏日

 夏の暑さで体力が弱まっている人は、気温は真夏より低くても、体感では厳しい暑さと感じますので、もうしばらくは暑さに注意が必要です。

表1、表2の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100ー一生付き合う自然現象を本格解説ー、オーム社。

表3の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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