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動きが遅い台風15号 台風の大きさと強さは例えると身長と体重

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」赤外画像(平成29年9月1日9時)

強風域が大きい特徴の台風15号

 大型で強い台風15号が小笠原近海で動きがゆっくりとなっています。小笠原諸島では、暴風雨となっている時間が非常に長くなり、危険な状態が続いています。

 小笠原近海の海面水温が高いためにやや発達し、昨日から台風の眼がはっきりしだしました。

 中心気圧955ヘクトパスカル、最大風速は毎秒35メートル、風速25メートル以上の暴風域は170キロメートルですが、風速15メートル以上の強風域は東側950キロメートル、西側500キロメートルもあります(9月1日9時現在)。 

 強風域が非常に大きな台風です。

図1 台風15号の風速が15メートル以上の範囲(黄色の円内)
図1 台風15号の風速が15メートル以上の範囲(黄色の円内)

台風の大きさと強さは人間の身長と体重に相当し、腕力はわからない

 気象庁の発表する気象情報や警報では、一つ一つ異なった性質を持っている台風を分類し、「大型で強い台風」や「超大型で猛烈な台風」というように大きさを表現する言葉と、強さを表現する言葉をつけています。

 これは、台風の大きさと強さを、たとえでいうと、人間の身長と体重に相当しています。身長と体重だけでは、その人の体力がある程度までしかわからないのと同じで、小さな人でも腕力の強い人がいます。

 台風15号は、強風域が大きいために遠くにいるときから強い風と雨をもたらりますが、大暴れする暴風域の範囲が意外と狭い台風です。

 台風が遠くにいても(離れていても)、強い雨や風に注意が必要な台風ですが、台風が接近しても雨や風はそんなに強まってはきません。

 しかし、台風がごく近くまで来たときに大荒れとなるタイプで、油断しがちな台風です

台風の大きさと強さは気圧で決めていた

 台風の大きさと強さの表現は、昭和30年代後半から使われています。

 ただ、当時は台風周辺の風の観測が難しかったため、大きさについては主に1000hPa等圧線の半径で分類し、強さについては主に中心気圧を用いて分類してきました。

平成3年から台風の大きさと強さの基準を風で決定

 昭和52年(1977年)に静止気象衛星「ひまわり」が打ち上げられ、その利用技術が蓄積されました。そして、平成3年は、「ひまわり」により台風周辺の風を高い精度で解析できるようになったことから、台風の大きさと強さの分類を、それまでの気圧に重点をおいたものから、大きさは平均風速が15メートル毎秒以上の領域(強風域)の半径によって、強さは最大風速によって分類しています。

表1 平成3年から11年まで使われた台風の大きさと強さの基準
表1 平成3年から11年まで使われた台風の大きさと強さの基準

平成12年から安心感を与える表現は使わない

平成11年8月14日の神奈川県の玄倉川水難事故(死者13名)を契機に、このような表現では、危険性を過小評価した人が被害に遭うおそれがあるとして、気象庁では翌年から一般利用者に安心感を与えないよう、「ごく小さい」「小型」「中型」「弱い」「並の強さ」の表現は使っていません。

表2 平成12年から使われている台風の大きさと強さの基準
表2 平成12年から使われている台風の大きさと強さの基準

 今年から、気象庁は警報級になる可能性を発表しています。

例えば、千葉県南部の館山市では、強風波浪注意報が発表中ですが、これから2日にかけて暴風警報の可能性と、3日にかけて波浪警報の可能性があり、特に、2日の朝から夜遅くにかけては波浪警報の可能性が「高」となっています(図2)。

 これらの情報は、気象庁のホームページにある「気象警報・注意報」のページから、該当する市町村を選択すると見ることができます。

図2 千葉県南部の警報級になる可能性
図2 千葉県南部の警報級になる可能性

 台風の大きさと強さは、あくまで目安であり、これで台風を判断せず、台風情報や警報、注意報の中身に注意し、警戒してください。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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