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東京オリンピックの4年前、ローマ大会直前の五輪台風

饒村曜気象予報士
万国旗(ペイレスイメージズ/アフロ)

平成29年7月の台風多発

今年(平成29年)の7月は台風が8個発生しましたが、これは、昭和26年(1951年)の統計開始以来、昭和46年と並ぶ最多タイの記録です(表)。

 しかし、発生から消滅まで寿命が短い台風もあり、天気図上で同時に存在していたのは3個どまりです。具体的には、台風5号・6号・7号、台風5号・6号・8号、台風5号・9号・10号の組み合わせでの存在です。

表 月別台風発生数
表 月別台風発生数

 3個同時に存在することは、そんなに珍しいことではありませんが、5個同時となると、過去に1回しかありません。

 東京オリンピックの4年前、ローマ大会の直前のことで、五輪台風とよばれました。

五輪台風

 昭和35年(1960)8月23日15時から翌24日9時まで、天気図上に左から台風17号、15号、16号、14号、18号という5個の台風が並んでいます(図)。

図 五輪台風時の天気図(昭和35年8月23日21時)
図 五輪台風時の天気図(昭和35年8月23日21時)

 東京オリンピックを4年後にひかえ、ローマオリンピック開催の直前(8月25日が開会式)というタイミングであったため、マスコミはこれを五輪台風と名づけ、大きく報じています。

 最盛期の台風は、等圧線が円形となりますので、輪とみなせますが、衰弱期の温帯低気圧に変わりつつあるときには、円形が崩れます。日本海北部にある台風15号は、温帯低気圧に変わりつつあるために円形が崩れています。オリンピックマークのように、同じ大きさの五つの輪ではなく、大小の四輪と変形している一輪からなる五輪です。

 これだけ台風があると、台風の解析や予報を行っていた気象庁等では大変な作業量となり、台風の飛行機観測を行っていた米軍は、「Physically impossible due to Personnel shortage (定員不足につき物理的に不可能)」という通知を関係機関に出しています。

 気象庁では毎年1月1日以後,最も早く発生した台風を第1号とし,以後台風の発生順に番号を付けていますが、番号だけでなく名前も使っています。五輪台風当時、アメリカが名付けた女性名を使っていましたので、五輪台風は14号から順にベス、カルメン、デラ、エレイン、フェイという名前の女性5人組です。

7~9月は台風が並ぶ

 天気図上に台風が多く並ぶのは、台風が多く発生し、動きが遅い7月から9月に集中しています。 

 一般に、台風が多くあると勢力は弱いとされています。単純にいえば、いくつもの台風でエネルギー源の湿った暖かい空気をうばいあうためですが、例外が少なくありません。

 

 台風は、いろいろな顔を持っていますので、台風は最後まで油断しないという心構えが大切です。腐ってもタイ(台風)です。

図の出典:饒村曜(1986)、台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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