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海面水温が高い海域の台風5号 衰えずに西日本~沖縄に接近

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」の赤外画像(8月2日4時20分)

 日本の南海上にある非常に強い台風5号は、海面水温が29度以上の水蒸気が豊富な海域を北上中ですので、あまり衰えずに西日本~沖縄に接近する予報で警戒が必要です。

台風のエネルギー

 台風は中心付近の眼をとりまく積乱雲の中で、水蒸気が水になることで生じる熱(潜熱)がエネルギーです。

 このため、台風は水蒸気が豊富な場所、つまり海面水温が約26度以上の熱帯の海上で発生・発達します。同じ熱帯でも、陸上では水蒸気が少ないことから台風は発生・発達をしません。

 温帯の海上では、夏になり、海面水温が26度以上になってくると水蒸気が豊富になり、温帯の海上でも台風が発生するようになります。

 夏になると日本近海で台風が発生するようになります。

表 海面水温と台風中心気圧の24時間変化(昭和59年の調査)
表 海面水温と台風中心気圧の24時間変化(昭和59年の調査)

 筆者が昔、海面水温と24時間後の台風中心気圧の変化についての関係を、重回帰式で求め、気象庁の欧文藁報で発表したことがあります。これによると、発達期の台風は、海面水温が高いほど台風の気圧は下がります(発達します)。衰弱期の台風は、海面水温が高いほど衰弱の度合いは小さくなります(表)。

 勿論、台風の発達・衰弱は海面水温だけでは決まりませんので、これは、あくまで、統計的な話です。

台風5号の進路上の海面水温

 台風5号は、日本の南海上をゆっくり北上し、西日本から沖縄に接近するという予報です(図1)。

図1 台風5号の5日先の進路予報(8月2日3時)
図1 台風5号の5日先の進路予報(8月2日3時)

 この予想進路は、台風5号が海面水温が29度以上のかなり高い海域を進むという予報でもあります(図2)。

図2 日別海面水温(平成29年7月31日)
図2 日別海面水温(平成29年7月31日)

 台風5号は、あまり衰えることなく西日本から沖縄に接近の予報となっているのは、海面水温が高いためです。

大東島地方は4日昼頃に暴風域の可能性

 台風5号の北上により、沖縄県の大東島地方では、8月4日昼頃に暴風域に入る可能性があります(図3)。

 とはいっても、今のところ、暴風域に入る可能性は10%くらいです。

図3 沖縄県大東島地方の暴風に入る確率(平成29年8月1日21時の予報)
図3 沖縄県大東島地方の暴風に入る確率(平成29年8月1日21時の予報)

 台風は地球の自転の影響でゆっくり北上していますが、台風を大きく動かす上空の風は弱いので、まだまだ台風進路は絞りきれていません。

 このため、台風の動きは遅く、予報円も大きいままです。

 大きな予報円では使えないという意見もありますが、これが、現在の台風予報の限界で、だからこそ、最新情報でカバーする必要があります。

 西日本から沖縄だけでなく、全国で台風情報に注意の一週間です

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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