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東日本太平洋側と西日本で少雨 日本は無駄遣いができるほど水が豊富ではない国

饒村曜気象予報士
水道の蛇口を回す手元(ペイレスイメージズ/アフロ)

次々に移動性高気圧

東日本太平洋側と西日本では、4月下旬頃から次々に移動性高気圧が通過し、雨が少ない状態が続いています。

今後も一週間程度は、移動性高気圧に覆われた状態が続きますので、晴天で雨の少ない状態が続く見込みです(図1)。

このため、気象庁は、5月26日に「東日本太平洋側と西日本の少雨に関する全般気象情報(第1号)」を発表し、注意を呼びかけています。

図1 平成29年5月29日9時の予想天気図
図1 平成29年5月29日9時の予想天気図

今年の東京の降水量

今年の東京の降水量は、2月から3月中旬は平年より少なく、その後、平年並に降ったものの、4月下旬からは再び少ない状態が続いています。

このため、1月1日から5月末までに300ミリ程度しか降っていません(図2)。

なお、昨年はほぼ平年並の降水があり、5月末までに500ミリ程度降っています。

図2 東京の積算降水量(平年値、2016年、2017年)
図2 東京の積算降水量(平年値、2016年、2017年)

今後、梅雨期に雨が少ない場合は、夏の渇水が心配となります。

とはいえ、梅雨期に雨が多い場合は、豪雨災害が心配となります。

日本の降水量の3本柱

日本は、冬は日本海側の雪、夏は梅雨前線によるほぼ全国的な雨、夏から秋にかけては台風の雨という降水の3本柱があります。

1年を通して幾度かのまとまった降水現象があることから、水不足となる年があっても、何年も渇水が続くということはとても考えにくい国です。

日本の年間平均降水量は世界平均の2倍の1700ミリも降っています。

しかも、森林でろ過されたきれいな水が平野部で使えることから、日本は単に水が豊富というだけではなく、安全でおいしい水が豊かな国といえます。

しかし、一人当たりの降水量で見ると、日本は世界平均の3分の1しかありません(図3)。

特に、人口が多い大都市周辺では、一人あたりが少なくなりますので、年によっては渇水被害が生じます。

図3 世界各国の年平均降水量と一人当たりの降水総量
図3 世界各国の年平均降水量と一人当たりの降水総量

日本は水が豊かな国といっても、一人あたりに考えると無駄遣いができるほど豊富ではありませんので、水は大事に使う必要があります。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁ホームページのデータをもとに著者作製。

図3の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100ー一生付き合う自然現象を本格解説ー、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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